後藤健生の「蹴球放浪記」連載第46回「大木旅館の愛しのトリフィーナ」の巻の画像
南アフリカW杯のADカード 提供:後藤健生
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ワールドカップ取材とはどういうものなんだろう。フリーランスのジャーナリストの海外取材での過ごし方なんて、かたぎの自分には想像することすらできない。そうお嘆きのあなたへ、ベテラン一流ジャーナリストが、南アフリカ・ワールドカップ取材の事情を赤裸々にご報告――。

■早撃ちトルシエ

 2010年の南アフリカ・ワールドカップの時は、約1か月「大木旅館」というところに泊まりました。

「大木旅館」といっても、別に「日系人の大木さんがやっている旅館」というわけではありません。本当は「Big Tree B&B」という名前なのですが、発音しやすいように日本人仲間の間では「大木旅館」と呼ぶことにしたのです(本当に、敷地の中に大きな木が立っていました)。

 2010年以降のワールドカップは南アフリカ、ブラジル、ロシアと、いずれも巨大な国で開かれました。

 ドイツとかフランスであればそれほど広くはありませんし、鉄道が発達していますから、列車を使って国の隅々まで簡単に行くことができます(しかも、ワールドカップの時はADカードを持っていると無料で乗車することができます!)。しかし、大きな国では飛行機を使わざるをえないので、毎日の移動はかなり大変です。

 とくに、南アフリカは貧富の差や人種間の対立があったので犯罪率がとても高い、要するに“物騒な”国でした。アフリカ通で知られるフィリップ・トルシエも「南アフリカに住んでいた時は、ベッドの脇にピストルを置いていた」と言っていました。

 普通、僕はどんな国に行っても、スタジアムまでは公共交通機関を使って行くことにしていますが、南アフリカではそれは難しいでしょう。

 まず、ホテル探しから始めました。

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