■もしスーパーリーグが実現しても

 今回FIFAと地域連盟の会長名で出された「声明」が効力のあるものなら、たとえ「欧州スーパーリーグ」が組織され、莫大なテレビマネーやスポンサーマネーが流れ込み、それによってクラブやプレーヤーが大きな収益や報酬を得たとしても、その熱狂は数年で冷めることになるだろう。「スーパーリーグ」のクラブ同士でしかできない試合に、ファンも時を経ずして飽きるに違いない。

 ファンにとって、「欧州スーパーリーグ」は大きな夢かもしれない。「リバプールバルセロナ」「ユベントスバイエルン・ミュンヘン」のような試合を、毎週楽しむことができるからだ。後藤さんが言うように、あらかじめ優勝争いをするクラブが限られているのではなく、どのクラブにもオープンなチャンスがあるリーグは、興味を引くかもしれない。

 だがそうしたクラブ間でもやがて「格差」が生まれ、毎年優勝を争うクラブと万年下位のクラブが出てくる。それがサッカーというものだ。そしてもし毎年17位や18位でうろついているクラブが毎年優勝争いをするクラブとの試合にビジターとして出向いたら、その日のスタンドはガラガラになってしまうかもしれない。そう、マンチェスター・ユナイテッドがバーンリーとやるときのように……。そうなったら、優勝争いをしているクラブだけが脱退して、こんどは「スーパー・スーパーリーグ」をつくるのだろうか。

 いま、ヨーロッパのサッカーは完全に「バブル経済」のなかにある。バルセロナは、250億円の減収だと言っても、その前のシーズンの収益は1000億円を超していたのだから、それでも750億円もの収入があったことになる。その収入の大きな部分が、テレビ放映権料の分配金である。ちなみにバルセロナは、2019年に350億円以上を放映権から得ている。Jリーグの実質的な年間放映権料の3.5倍が、わずか1クラブに流れ込んでいるのだ。

※第3回に続く

 

  1. 1
  2. 2
  3. 3