■FIFAから離れた人気プロリーグが終わった理由

 ラドネッジが書いたように、昨年末の段階では実現間近と思われていた「欧州スーパーリーグ」。FIFAと6地域連盟の「声明」がどのような効力をもつのか、実現へ向け突っ走ろうとしていたビッグクラブを制する力があるのか、よくわからない。ただ、今回の「声明」が重大な決意の元に行われたのは間違いない。

 現在、FIFAは世界を覆っている。加盟協会は211。国際的に独立国と認められながらFIFA未加盟という国はほとんどない。すなわち、FIFAの下、全人類の大半がサッカーを通じて世界とつながっていると言っていい。今回の声明は、「欧州スーパーリーグ」に参加するクラブやプレーヤーはそのつながりを断たれることを意味している。

 1948年に南米のコロンビアに新しいプロリーグが設立された。だがこのリーグはそれまでのアマチュアリーグが発展したものではなく、この国のひと握りの財閥が資金をつぎ込んでつくったものだった。アマチュアリーグはFIFAに提訴、FIFAは新プロリーグを資格停止にした。すなわち、公式大会、親善試合を問わず、FIFA傘下にあるクラブとの試合を禁じたのである。

 FIFAから放り出された新プロリーグは、逆に言えばFIFAの束縛から逃れたわけで、役員たちは即座に南米各地、そしてイングランドなどに飛び、それまでの移籍ルールを無視して選手たちに直接接触し、有力選手を次々と買いあさった。10倍もの報酬を提示され、あっという間に100人を超す有力選手が集まった。そして新プロリーグは人気沸騰となり、なかでもアルフレード・ディステファノを中心にアルゼンチンの選手を先発に9人も並べた「ミリョナリオス」は圧倒的な強さと人気を誇った。

 しかしコロンビアの新プロリーグのクラブは外国とのチームとの親善試合もできず、選手たちはそれぞれのナショナルチームでプレーすることも許されなかった。報酬の高さよりも、選手たちは国際的な舞台で活躍し、ワールドカップに出場することを望むようになった。そしてわずか数年で有力な選手たちが去り、コロンビアの新プロリーグの「絶頂期」は終わりを迎えるのである。

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