やりたいことのために選手を適切に選ぶところまでが監督の仕事で、あとは選手の力に任せる。タレントが揃っているチームは、監督は決定を下すだけでいい。
それはレアル・マドリードやユナイテッドのようなごく一部のメガクラブにしか当てはまらないことだが、それができる監督は貴重だ。選手に任せつつも、選手が監督を超える存在になることがない存在。それこそ、サー・アレックス・ファーガソン監督が退任してからのユナイテッドに足りなかったものだ。
スールシャール監督は、かつてのユナイテッドの強さを取り戻す、という趣旨の発言を度々する。ファーガソン監督の下であらゆるタイトルを勝ち取った黄金期のメンバーである彼は、複雑な戦術で選手を縛るのではなく、適切なメンバーを選んで最低限の約束事さえあれば選手が勝利をもぎ取ることが出来ることを知っている。当時のユナイテッドも、なぜか勝つ、だった。結果が選手に自信を与え、更なる結果をもたらす。スールシャール監督が目指す、強かったユナイテッド、は確実に近づいている。今シーズン、リーグタイトルが手に入れば、トーナメントも、なぜか勝てる、になるのだろう。
試合後、スールシャール監督は「我々は勝利に値しなかった」と言って落胆してみせたが、果たしてそれは本心だろうか。1点もののチャンスはあったが、2位にアウェイで負けない、という当初の目的は達成している。首位という立場が、監督としての立ち振る舞い方を上手くさせている。
我々は、ビッグクラブの勝者のメンタリティの築かれ方、ビッグクラブの指揮を執りながら成長していく監督、という現在のサッカー界では中々見ることのできない稀有な物語を同時に見ているのかもしれない。
■試合結果
リバプール 0ー0 マンチェスター・ユナイテッド