日本のスタジアム新時代(3)「トイレ問題」を見事に解決した2つのスタジアムの画像
日本のスタジアム新時代(3)「トイレ問題」を見事に解決した2つのスタジアムの画像

『世界スタジアム物語 競技場の誕生と紡がれる物語』(ミネルヴァ書房刊)という著作をもつ後藤健生さんが、今年オープンしたスタジアムを訪れて大きな満足を覚えたという。京都府亀岡市にできたサンガスタジアムのどこが、世界のサッカー場を知る筆者にそれほどの思いを抱かせたのだろう。観戦しやすいスタジアムの条件とは。そして、日本のスタジアムのレベルはいま、どのあたりにあるのか―。

■ 「カンセキスタジアムとちぎ」は競馬場の跡地に

 僕は、皇后杯の準決勝の観戦のためにサンガスタジアムを訪れたのだが、皇后杯の1回戦から準々決勝までの試合の一部は栃木県宇都宮市にやはり新しく建設された「カンセキスタジアムとちぎ」(栃木県総合運動公園陸上競技場)で開催された。

 2006年に閉場した競馬場の跡地を利用して、2022年に栃木県で開かれる「いちご一会とちぎ国体」のメイン会場として県が建設したスタジアムだ。J1ライセンス基準を満たすスタジアムであり、2020年3月にはこけら落としが行われ、J2リーグの栃木SCのホームゲームも開催される予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大のためにすべてが延期となり、本格的なイベント開催は12月の皇后杯とJ2リーグの2試合を待たなければならなかった。

 このスタジアムは陸上競技場なのでサンガスタジアムのように試合が見やすいわけではない。

 陸上競技場でも、サッカーの試合を観戦しやすいスタジアムと、そうではないスタジアムがある。ポイントは陸上競技のトラックとスタンド最前列との距離だ。

 たとえば、横浜の日産スタジアムのコーナー付近にはトラックの外側に何もない大きなスペースがあるから、スタンドからピッチ(コーナーフラッグ)までの距離はかなり遠くなってしまう。川崎の等々力陸上競技場は改装されてとても良いスタジアムになったが、スタンド全体の平面が「D字型」をしていて、ゴール裏サイドスタンドのメインスタンドに近い付近ではピッチからかなり遠くなってしまっている(このスペースはサッカー観戦者から見れば“無駄な”スペースだが、陸上競技の大会の主催者にとっては運営上とても便利な空間となる)。

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