味スタの試合の話題に戻れば、結局、そのジョアン・オマリが再びヘディングでゴールを決めることとなったところを見ると、どうやらサッカーの神様は「前半のゴールが認められなかったのは気の毒だ」と思っていたようである。
全体として実力も拮抗した同士の試合であり、ボールをつなぐ神戸と、カウンターから一気にゴール前に迫るFC東京の両チームの持ち味の違いも見られた試合だった。だが、同時に、この試合は激しさを感じさせるものではなく、どこか“大人しい”試合でもあった。
試合前の時点でホームのFC東京は6位、アウェーの神戸は12位。上位争いをしているわけでもなく、もちろん降格も関係のない状況。そして何よりも、両チームともカタールでのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)での厳しい戦いを終えて疲労を溜め込んだ状態だった。
とくに、ACLで準決勝まで戦った神戸にとっては帰国後最初、そして今シーズン最後のゲーム。フィジカル的にもメンタル的にも難しい状況だったことだろう。
さらに、ともにカタールで戦ってきたチーム同士だっただけに、互いにいわば“戦友”のような、同志的な感情を抱きながら戦っていたようにも見えた。
歴史に「イフ」はないことは百も承知だが、もしも、ディエゴ・オリヴェイラが悪質タックルで壊されることがなかったら、あるいはVARの過剰な介入がなかったら、同じ12月19日に、この両チームのどちらかは味の素スタジアムではなく、カタールのアル・ジャヌーブ・スタジアムでACL決勝を戦っていたかもしれないのである。