■岩尾キャプテンの言葉はJリーグの価値を高めた
リカルド・ロドリゲス監督は後半開始から交代カードを切り、ケガ明けで3試合ぶり出場の渡井理己、ジョーカーのFW河田篤秀らを送り込む。しかし、リーグ最少失点を誇る相手守備陣を崩し切れない。スコアを刻むことはできず、0対1のまま最後の笛を聞く。福岡にシーズンダブルを喫したものの、得失点差のアドバンテージは揺るがず、徳島はJ2優勝をつかみ取ったのだった。
試合後にテレビの共同インタビューに応じたキャプテンの岩尾憲は、「J2優勝を成し遂げたいまの気持ちを聞かせてください」との質問にこう答えた。
「新型コロナウイルスが世界的にも猛威を振るったなかで、自分たちがピッチの上でサッカーをすることが、果たして何の役に立つのだろうか。そういったところへ立ち返らされてから、今日までリーグ戦全日程を終えることができたことにまず、多大なる皆さまの支えがなければ実現することのなかったいまこの瞬間に、本当に感謝しています」
クラブ史上初のJ2優勝をつかみ取った歓喜でも、長いシーズンを戦い終えた安堵でもなく、周囲の支えに対する感謝を最初に示したのは、とても、とても、とても意味のあることだ。J2リーグの価値、Jリーグの価値、サッカーの価値を、岩尾は高めてくれたと思う。徳島の頼れるキャプテンは、素晴らしいメンタリティの持ち主である。