■ぎりぎりのゴーサイン
「できるだけ強いチームとやりたい」という森保一日本代表監督の要望を受け、事務方の奔走でカメルーン、コートジボワールとオランダのユトレヒトで対戦することが決まった。両国とも、日本と同様、スタッフは自国からくるが、選手は全員ヨーロッパのクラブに所属し、オランダへの入国も問題がなかった。だが反町技術委員長は最後の最後までどうなるかわからなかったと語る。
「メンバー発表(10月1日)の1日か2日前に『これは無理だ』という話が出ていました。オランダの防疫対策で、スペイン全土や、マルセイユを含むフランスの多くの地域からの入国が制限されていました。その状態で、穴埋めしながらやるなら、日本代表の活動とは言えない。やること自体を中止しようと考えていました」
結局、メンバー発表の直前にそれらの国・地域の選手たちが陰性証明を提出し、オランダからの帰国時にも72時間以内の陰性証明があれば隔離は必要がないことになったため、本当にぎりぎりの時点でゴーサインが出た。
「背景には、欧州選手権(EURO)のプレーオフやネーションズリーグがありました。これらの試合のために選手たちが動かなければならない。一部の国が制限をしていたら、大事な選手が出場できないかもしれない。痛切に感じたのは、ヨーロッパではスポーツが文化として人々の生活に根付いているということなんです。加えて、重要な試合を中止にしてしまったら、経済的なダメージも大きい。日本では、スポーツはどちらかと言えば『不要不急』の部類にはいっているということですね。ともかく、今回の日本代表の活動はヨーロッパにおけるスポーツの地位に救われたことになります」