■「相手にペースを長く握られ過ぎたね」
―霧のおかげで、無失点記録も途絶えてしまいました。
大住「もうひとつ問題だったのは、後半ああやってペースを握られているとき。もちろん監督が言うように、我慢すべきところは我慢してチャンスをうかがう。そういう姿勢は重要なんだけど、相手にペースを握られて自陣から出られない状態が長く続いてしまったら、勝てるわけがないからね。
そのときに何をすべきかを、もうちょっと皆で整理をして、意思統一ができないと。ワントップに送って潰されるだけを繰り返していたのではダメ。それがあまりに今日は長かった。全体の動きが落ちた以前に、そういうところを、どうすればいいのかというのを整理していかないといけないね」
後藤「具体的に言うと何ですかね。もう少し繋いで、自分たちがボールを持つ時間を増やすとか?」
大住「たとえば、前に1人しかいなくて、相手が2人いる、そんなところへ無理して長いボールを蹴って全部跳ね返されるよりも、サイドに出して戻して繋いで。プレスを受けるだろうけど、最終ラインのところでキーパーを含めたビルドアップのところでは、100パーセントかけられるわけじゃないから。
狙ってくるのは、その次に出たところだから。そこで時間を作って落ち着かせる、そういう試合運びの技術がいるし、今日の試合では欲しかったなという感じがしたけど」
後藤「あとは、ケガをしたふりをして5分伸ばすとかね」
大住「ああ、そういうことも含めてだよね」
後藤「そういうのも何もなかったよね」
大住「ナイーブな試合運びで、ダメな時はダメでごめんなさい、みたいな試合になっちゃった。そこが後半はいただけなかったね。それで言うと、前半には面白いシーンがあって、前半の終わりごろに相手のペースになりかけていた時があったんだよね。30分過ぎくらいからかな。
ずっと押し込まれていたんだけど、43分に左サイドでカウンターのチャンスみたいのがあって、鎌田が原口にボールを渡して、その鎌田が抜けていった、その時に原口が何をしたか。普通だったら鎌田に出して、潰されて終わりになるところなんだけど、原口はそこでバックパスをしたんだよね。
あのプレーについては賛否両論があるとは思うんだよ。チャンスを使わずに後ろに戻してしまったというのはね。だけど、ああやってチームを落ち着かせる、一息つかせるというのは、すごくチームに必要なプレーだなと思った。
原口はなかなか成熟してきたなと、あの時に感じたんだけど。そういう風にしてゲームを変えていくという作業が、個人もチームも、後半の時にやってほしかったなって。後藤さんはそのプレーを覚えてる?」
後藤「そうね。あの場面であれが必要かという判断は難しいけど、原口の意図としては間違いなくそうだね」
大住「そういうことをした、という事実が非常に重要だと思うんだけど」
後藤「だから、あれぐらい余裕があるときはそういう判断ができるけど、後半であそこまで押し込まれると、もうバタバタするだけになっちゃったということだね」
大住「そうだね」
後藤「あの時間のメキシコの攻めはすごかったよね。2次攻撃、3次攻撃が次々に来たからね」
大住「シュートとしてはロングシュートがあったのと、フリーキックからヘディングがあったくらいかな。そうだったんだけど、日本はバタバタしていたよね」
後藤「対応するだけになっちゃった」
大住「うん。その時に前へ出ていくチャンスがあったんだけど、そこであえて戻した原口のプレー。ダメだよ、という人はいるかもしれないけど、僕が感じたのは、本当に素晴らしいな、というものだったね」