■J2首位の徳島ヴォルティスのゴールを揺らす

 好調ぶりはさらに続いた。

 東京Vは、続く第32節ではJ2で首位を走る徳島ヴォルティスと対戦した。

 リカルド・ロドリゲス監督が率いる徳島は、非常に完成度の高いチームだ。

 オリジナル・ポジションとしては(守備時は)普通の4-4-2なのだが、攻撃に移ると右サイドバックの藤田征也がポジションを上げ、ツートップの一角の垣田裕暉をワントップとして残し、数字で表現すると3-2-4-1に変化して、分厚い攻撃を見せる。

 こうした可変システムは、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が本格的にJリーグに持ち込んで、今では日本のサッカーにも完全に定着している。大学サッカーでも、高校サッカーでも、可変システムをこなすチームはけっして珍しくない。昨シーズンは、両サイドバックがインナーポジションまで上がって攻撃に参加する形で横浜F・マリノスがJ1リーグを制覇した。

 東京Vも、左サイドバックの福村貴幸がMFとなって攻撃に厚みを加えるプレーをする。

 だが、徳島のこの可変システムは完成度が非常に高く、システムを変更する際のスムースさには目を見張らざるをえない。

 実際、東京Vとの試合でも前半の立ち上がりから完全にゲームを支配し、17分から18分にかけて分厚い攻撃を仕掛け、最後は藤田の長いクロスを清武功暉が押し込んで早くも先制。「これは一方的な試合になってしまうかな」と思わせた。

 だが、ここから東京Vが盛り返す。激しい守備で徳島の攻撃を断ち切ると、パスを丁寧につないで攻めると言う本来のやり方を変更して、長いボールを駆使してフィールドの幅をいっぱいに使った攻撃で逆に徳島を押し込めたのだ。そして、前半終了間際の43分に同点ゴールを決めたのが藤田だった。

 中盤で、いつものようにボールを奪った藤田は、すぐにトップの端戸にボールを預けると、そのまま一気に前進。端戸からのリターンパスをもらった藤田は落ち着いて相手GK上福元直人の位置を確認すると、セービングする上福元の脇下を撃ち抜いたのだ。

 藤田は第30節、11月1日のアルビレックス新潟戦でJリーグ初得点を決めたばかりで、これがJ2リーグでの2得点目だった。

 藤田の攻撃的な能力については、永井監督も着目しているのだろう。第27節の栃木SC戦では、永井監督が藤田を同じMFでも2列目のインサイドハーフとして起用したことがある。同じ逆三角形のMFでも、山本理仁をアンカーに置いて、藤田を1列前で起用したのだ。

 もっとも、この時は全体にバタバタした試合になってしまい、結局、後半は藤田がアンカー、山本が2列目に戻したのだが……。

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