しかも、3人は下がってプレーすることが多く、中盤の人数が過多な状態となった。川崎は本来3トップが前からの守備に行くため、中盤の構成は3枚となる。それに対し、札幌の中盤は7人にも膨れ上がる。川崎が誇るパスワークも、これほどの人数差があると、流れるようには回らなくなる。川崎がこの試合で“前からの守備”に行くことができなかったのは、3トップが前がかりになることで中盤の数的不利がますます際立つ恐れがあったからだ。
つまり、ミシャ式ゼロトップは、攻撃面だけでなく、守備面での効果も大きかったことになる。
そして5つ目のポイントが、川崎に対するマンツーマンだ。川崎の人とボールが動く流れるようなパスワークに対して、誰が誰を見るかを明確にした。鬼木達監督が「マンツーマンで来る分、当然、足下は狙ってくる。そういう意味で言うと、相手の逆や背中、背後を取らないといけなかった」と試合後に話したように、川崎としてもマンツーマンへの対策は織り込み済みだった。
しかし、中盤で数的優位を作った状態で、しかも、ミシャサッカーの「3バック+大外のウイング」で幅を取ることで、川崎の選手に難しさを与えたといえる。川崎のパスワークに複数の制限を与えることで、ゲームを札幌のリズムにしてみせたのだ。