■「観ていて美しい試合」だった
13分にバイエルンはレオン・ゴレツカのゴールで先制。ピッチを広く使う斜めのパス、2列目からの飛び出し、そしてダイレクトプレーと、引いた相手を崩すお手本のような一連の流れだった。このゴールで一気にCL王者が主導権を握るかに思われたが、ロコモティフも鋭いカウンターを連発。格上相手に果敢に抵抗し続ける。すると70分、ゼ・ルイスに左サイドの裏を取られて独走を許すと、カーボベルデ代表FWの折り返しを、ニアに走りこんだアントン・ミランチュクに押し込まれて同点を許す。ハイラインの弱点をまんまと突かれた格好となった。
79分にヨシュア・キミッヒが貫録のミドルシュートを突き刺して、ようやくバイエルンは勝ち越しに成功。結果的にはハンジ・フリック体制下でCL10連勝を記録したが、敵地でロコモティフに大いに苦しめられることになった。殊勲のゴールを決めたキミッヒは、試合後に「骨の折れる勝利だった。間違いなく僕らのベストゲームではなかったね」と振り返っている。
バイエルンのファンからしても、決して満足のいく内容ではなかっただろう。しかしロコモティフの、特にスタジアムで観戦したファンからすれば、大満足の90分だったのではないか。負けはしたが、モスクワのチームが歴史的因縁のあるドイツのチームを追い詰めたのだ――。
そして、こうした試合にこそ、CLのグループステージの魅力があるのではないか。中堅国の強豪が、欧州を代表するビッグクラブを迎え撃ち、あわやというところまで追い詰める。そして時には番狂わせを引き起こす。コロナ禍だからこそ「観ていて美しい」ロコモティフ対バイエルンの試合には、そんなサッカーの魅力が詰まっていた。