現在、ストライカーらしいストライカーを挙げるとすれば、それはボルシア・ドルトムントのアーリング・ハーランドだろう。

 先述したとおり、前線からのプレスは日を増すごとに重要になってきている。一方、それは、そこを剥がせばスペースが広がっていることを意味する。

 ハーランドのストロングポイントは、そのトレンドに合致している。第一に、彼の特徴は198cmの長身だ。それでいて、彼にはスピードとアジリティがある。コーディネーション能力が高い。デカくてノロい、という表現はハーランドには当てはまらない。大きく、速く、強いのだ。

 また、特筆すべきはハーランドのフィニッシュの正確性だ。ロマーリオやロナウドのような往年のストライカーは、相手GKや守備者を騙すようなシュートを得意とした。だがハーランドは特別なシュートを打たない。基本的に、ループシュートや美しいヒールでのゴールはない。左右両足とヘディングで、正確無比に枠内を捉えてくる。淡々と、まさにマキナ(機械)のように、ゴールを射抜くのである。

 それが数字に表れている。2019-20シーズン、チャンピオンズリーグで10得点を記録して一躍脚光を浴びたハーランドだが、その裏には19本のシュートで10ゴール(得点率53%)という恐るべきデータがあった。そして同シーズン、ザルツブルクで22試合28得点、ボルシア・ドルトムントで18試合16得点を記録。シーズン途中に移籍を果たした後も、彼のゴール量産ペースは変わらなかった。

 大きくて、強くて、速い。そして、ハーランドはスペースを読む力に長けている。さながら、彼は相手守備陣の穴を「ハッキング」しているようだ。その大型な「ハッカー」をめぐり、これからビッグクラブが争奪戦を繰り広げることになるかも知れない。

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