■今季のリーガでは不可能な戦術
バレンシア戦では中盤を省略しロングボールを多用してきた相手にDFライン裏のスペースを何度も突かれている。内容的に完敗だった9月5日のレバンテ戦では、最終ラインからのビルドアップを全く抑え込むことができなかった。
ウエスカ戦の失点シーンも相手GKからはじまったショートパスによる組み立てを掴まえきれず、高く押し上げた守備ラインを下げきれぬうちにフィニッシュに持ち込まれている。
もちろん、現段階では選手個々のフィットネスが上がりきっていない影響もあるのだろう。ただ今季のラ・リーガは例年以上の過密日程となる上、ビジャレアルはヨーロッパリーグも並行して戦わなければならない。
ただでさえ90分間ハイプレスをかけ続けることは難しいのに、それを週2試合ペースの連戦で続けることなど物理的に不可能。ゆえにビジャレアルはできる限りボールポゼッションを安定させることでゲームコントロールと省エネの両立を図っているのだが、現時点ではその戦い方がもう1つの懸念材料につながっている。
攻め急がず、ポゼッションの安定を優先したパス回しが染み付いているビジャレアルの攻撃は、必然的に相手が守備組織を整えた状況から崩しにかかる遅攻が多くなる。
だが開幕戦のウエスカがそうだったように、人数をかけてゴール前を固めたライバルの守備組織を崩しきるのは簡単なことではない。これまでの試合を見る限り、そういった遅攻の局面においてはジェラール・モレノとサム・チュクウェゼの個の力に頼る部分が大きく、チームとして打開できるような連動性の高い攻撃が確立できていないのだ。
エメリが久保に期待している役割は恐らくそこにある。