■「毎試合が就職活動。チャンスはいつ来るかわからない」

――南野拓実選手のリバプール移籍には驚きましたか。
「びっくりしましたね。でも、拓実くんが世界一と言ってもおかしくないチームでプレーしているという事実は、日本人でもやれるんだぞ、と示してくれていると思います。ワールドカップで日本が上位に行くには、そういう選手がどんどん増えていかないといけないと思うので、自分もそこに食い込んでいけるように頑張らないといけないなと思いますね」

――本田圭佑選手や吉田麻也選手も、オランダからイングランドなど他国に飛躍していきました。
「オランダからステップアップしていく選手、特に若い選手がオランダで頑張って5大リーグに出ていくことが多いと感じます。オランダで結果を出したら、いろいろな人が見てくれているんだなと感じていますね。どこで誰が見ているかわからないので、毎試合が就職活動のような気持ちで頑張らないと」

 まだ23歳なのか、もう23歳なのか。思いもよらない歩みだったのか、無限の可能性が広がっているということなのか。物事のとらえ方で、未来の行く先も変わってくる。

――ここまでの選手としての歩みは順調だったと思いますか。
「まったく順調じゃないと思います。順調というのは、高卒でプロとして即スタメンで出て、すぐにヨーロッパという流れだと思います。僕は、フロンターレではほとんど試合に出ていません。仙台ではたくさん試合に出させてもらいましたが、こっちに来て、また出られないようになりました。順調ではない歩みでしたが、それがあって今があると思っています。それに対してネガティブな気持ちはありません」
――すべてはこれから、ですね。
「何があるかわからないし、いつチャンスが転がってくるかもわかりません。そのチャンスをしっかりつかんでいくというのは、どこに行っても一緒と思います。そこだけに集中してやっていきたいと思います」

 チャンスが至るところに転がっている新シーズン、そして未来へと、板倉は心身の準備を進めていく。

(プロフィール)
いたくら・こう 1997年1月27日、神奈川県生まれ。小学校4年生で、立ち上げられたU-12チームに1期生として加入して以降、トップチームまで川崎フロンターレ一筋で育った。2018年には、期限付きでベガルタ仙台へ移籍。2019年1月には、イングランドの世界的名門マンチェスター・シティへと電撃移籍。すぐにオランダのフローニンゲンへ期限付き移籍し、昨季は年間を通して主力としてプレー。U-18から年代別日本代表に選ばれ続けており、昨年6月にはフル代表でもデビュー。来年の東京オリンピックやワールドカップでも活躍が期待されている
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