後藤健生の「蹴球放浪記」連載第24回「ビールを飲むために国境を越える」の巻の画像
EURO2008のADカード 提供:後藤健生
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スペインが圧倒的な強さで優勝し、昨シーズン神戸で現役引退したダビド・ビジャが得点王に輝いた第13回UEFAヨーロッパ選手権(UEFA EURO 2008)は、オーストリアと、物価の高さで知られるスイスで共同開催された。大会期間は6月7日から29日にかけて、通算23日間の長丁場の大会だ。フリーランサーの後藤さんの心配の種は、もちろん、すべて自腹の取材経費だ。

■1ユーロがなんと170円!

 海外旅行をする身にとって時には大敵となり、時には最大の味方となるのが「為替レート」というやつです。輸出企業にお勤めの方はどう思われるか知りませんが、旅行する身にとって「円安」は最大の敵です。

 ヨーロッパに行ってどこかの町の駅前でホテルに泊まるとしましょう。個室でバス・トイレ付きなら(まあ国によって千差万別ですが)50ユーロくらいでしょうか。

 これまで円高が最も進んだ時期には1ユーロ=80円くらいでした。つまり、1泊4000円。これなら“お得感”満載ですよね。しかし、最近のレートは1ユーロ=125円くらいですから、1泊50ユーロの部屋で6000円以上。たぶん「この部屋で6000円?」とちょっと疑問を感じるでしょう。

 ランチにパスタでも食べて10ユーロ取られたとすると、円高の時代なら800円。納得の値段です(味にもよりますが……)。でも、1250円では元を取ったとは感じられないでしょう。

 2008年にオーストリアとスイスの共同開催でヨーロッパ選手権(EURO)が開かれましたが、当時の為替レートは最悪でした。円安・ユーロ高が進んで1ユーロがなんと170円近くしたんです。スイス・フランは110円くらいでした。スイスはただでさえ物価が高いので有名な国です。正確に言えば、「物価が高い」というより「スイス・フランはいつでも高い」と言った方がいいでしょうか。

 いずれにしてもこの大会、綺麗な街が多く、アルプスの山々を見ながらの移動も快適でとても良い旅行ではあったんですが、お金の面では四苦八苦でした。

 大会前半はスイスのチューリヒに泊まっていたんですが、市内のホテルでは高すぎるので中央駅から4駅くらい離れた田園地帯にある安ホテルに泊まりました。駅から畑の中を10分くらい歩いて行かなければなりません。フロントには昼間の数時間しか人がおらず、他の時間は玄関で4桁のコードを打ち込んでドアを開錠します。

 こんな国ではレストランでテーブルに座って食事をするのは清水の舞台から(あるいはインスブルックのスキー・ジャンプ台から)飛び降りるほどの覚悟が必要です。駅とかスタジアム周辺でソーセージとパン、あるいはケバブをかじるのが正解でしょう。もちろん立ち食いです。

 しかし、スイスではソーセージ1本とパンで7フラン、ケバブは8フランもしました。約800円とか900円近い値段です。そして、ビールも7フラン……。

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