逆に言えば、現在ここまで得点に絡む数字を残せていない永戸はなぜ、ザーゴ監督の信頼を得たのだろうか。実はそこに、永戸というプレイヤーの特徴がある。選手名鑑、あるいは、解説者が永戸について説明するとき、「左足のクロスが正確」という言葉は常に彼とともにあるはずだ。あとは、「体力」という単語だろうか。永戸は今季ここまで出場したリーグ戦とカップ戦合わせて15試合ですべてフル出場を果たしているから、その評価に疑いの余地はない。
ただし、これだけで永戸の良さは測れない。ベガサポにとっては、「ロングスローを投げられる」という長所も挙げられるかもしれないが、それも蛇足に過ぎない。永戸の凄みは、その安心感にある。抽象的に思えるかもしれないが、そう伝えるしかない。
その安心感を生むのはいったい何かというと、まずはプレーをやり切ることだ。Jリーグが公表しているデータによれば、1試合平均の永戸のクロスは4.2本でリーグ3位。1試合平均シュート数は1.0本。ボールを持ったら、シュートかクロスまで行く回数が多いことになる。1試合平均シュート数1.0は、それだけ見ればインパクトがない数字に見えるが、MF三竿が0.9、MFレオ・シルバが0.6、MF広瀬陸斗が0.5、DF関川郁万が0.3ということを考えれば、守備陣としては高い数字であることが分かる(ちなみに、セットプレーで常にターゲットになる犬飼智也も1.0)。
「プレーをやり切る」ということは、クロスにせよシュートにせよ、相手から不意のカウンターを受ける可能性を低くするため、チームにとって非常に大きな要素だ。また、こうしたクロッサーがいることは、相手守備陣の視線をサイドに集めることにもなる。
FWに斜めのボールを入れることができるので、それほど高い位置でボールを持てなくても、チームの攻撃に寄与できる。縦パスがボランチなどから入らなくても、もう一つの「道」をつくることができる。