■パスにこそサッカーの醍醐味がある
そんな中で、新ルールを利用してパスをつなぐサッカーを“発明”したのが、1867年にスコットランドのグラスゴーで発足したクイーンズパークFCだった。彼らは「パス・サッカー」という革新的な戦法を武器にスコティッシュカップで優勝し、FAカップ(当時は、スコットランドのチームもFAに加盟していた)でも2度、決勝に進出している。ちなみに、クイーンズパークFCはスコットランド代表のホーム・スタジアム、ハンプデン・パークの所有者だ。
スコットランドでは、その後多くのチームがこの革新的な戦法を取り入れて、古くからの戦い方を続けるイングランドに対抗。「ロングパスのイングランド」に対して、「ショートパスのスコットランド」と言われるようになった。体が大きなアングロサクソン人主体のイングランドに比べて、スコットランドにはケルト系の国民が多く、体の小さなケルト系の選手がイングランドに対抗するためにもパス・サッカーは合理的な選択だった。
つまり、サッカーという新しいスポーツがラグビーなど他のフットボールと比べて最も大きく異なっているのが、このオフサイド・ルールの違いなのだ。
ラグビーのルールでは、パスをすることでボールを前に進めることはできない。人間がボールを持って走る(あるいは、モールやラックで密集を作ってボールを進める)しかないのだ。前方にパスをしてボールを前に進めることができるサッカーは、こうしてラグビーや他のフットボールとまったく違う、新しい形のフットボールとして基礎を固めたのだ。
その後、ラグビーの方は得点の方法を大きく変えたし(ゴールだけでなく、トライによっても得点が認められ、今ではトライの方の比重が大きくなった)、他にも選手交代その他、サッカーとラグビーでは何から何まですべてが違っている。だが、最も根本的な違いは何かといえば、やはり前方の味方にパスすることができるかどうかという違いなのだ。