等々力にはやっぱりこの男が似合う。
8月29日に行われたJ1第13節・川崎―清水戦に、MF中村憲剛が出場した。昨年11月2日に左足に大けがを負って以来、301日の公式戦のピッチだ。
プロになって初めての大けが。結局、昨年のリーグ出場数20は、プロになって最も少なかった。「10か月離れていた自分はプレーをちゃんと出来るんだろうか」との思いが募るのも仕方なかった。
この8月中に復帰したい、との思いはあったが、鬼木達監督は復帰戦に等々力競技場を選んだ。連勝などの記録もかかっていない。むしろ、チームとして2戦勝ちなし。バンディエラへの監督の思い、そして、チーム鼓舞の期待が感じられる。
試合は序盤から川崎ペースだった。この日の川崎は控えメンバー主体だったが、それでも前半から得点を奪い、ワンサイドゲームの様相に。チーム全体として、中村の復帰戦をお膳立てするかのように、危なげがなかった。
一方で、ベンチ入りしたメンバーが豪華だった。このサックスブルーのチームは、試合前練習に全体でウォーミングアップをしたあと、控え選手が鳥かごをする。そして、これはどこのチームもそうだが、ハーフタイムにも控え選手だけはピッチで練習する。このとき、中村の周りにいたのは、小林悠や谷口彰悟など、ずっとピッチで先発でやってきたメンバーだ。中村にとって、気を使わなくてもいい時間があった。
後半になっても、川崎は攻め続けた。そして51分、74分と得点を奪って3-0で迎えた77分、交代を知らせる電光掲示板に「14」の数字が映し出された。バンディエラが等々力のピッチに、Jのピッチに帰還したのだ。