前人未踏となる単一年内の10連勝がかかった試合の相手は2位のC大阪だった。振り返れば、8節でも1位・2位対決が実現。2位相手のG大阪を相手に白星を掴んだものの、1-0と再開後の川崎にとっては唯一の最少得点勝利だった。
C大阪戦もそのような固い試合になるかと思われたが、終わってみれば5-2の圧勝。攻撃力を存分に発揮して、桜を幹からなぎ倒したのだった。
とはいえ、この試合は決して簡単なものではなかった。C大阪を率いる知将ロティーナ監督の念入りな対策が功を奏し、ホイッスルが吹かれた直後からペースはC大阪にあるといってよかった。
開始6分という今期の川崎にとっての最速失点は、サックスブルーのユニフォームが混乱への対処の途中で遭遇してものであり、それこそロティーナ采配の術中にあった。
試合後の監督会見で、ロティーナ監督が「前半は良い内容で良いスタートを切れて、思っている内容の展開でした」といえば、鬼木達監督も「失点シーンでいうと、相手の狙いのところでやられたと思っています」と話したことも、これを裏付けよう。
C大阪が得点を生みだした要因を探る前に、川崎の戦い方を知る必要がある。今季の川崎は、システムを「4-3-3に変更」したということは、各メディアで繰り返し報じられていることなので、ご存じの方も多いだろう。この日も、初期配置を4-3-3でスタートした。
川崎が4-3-3を導入した理由については、いくつかの理由が考えられる。その1つが、前からボールを奪いにいくためだ。前線に人を多く配置することでプレスをかけ、相手のパスミスを誘う、あるいは、ダイレクトに奪い取って、攻撃に転じる。奪う位置が高ければ高いほどチャンスの度合いが高まることは説明するまでもない。
(他のチームでも前からボールを奪いにいく姿勢は見せるが、川崎の場合、まずは個人レベルでのプレスのかけ方が非常に丁寧。カメラ撮影ポジションという5~10㍍離れた場所から小林のプレスを見ても、手と足と“腰”を全部を使ってパスの出しどころをすべて封じられているような錯覚に陥る。難しいかもしれないが、ぜひ一度体感してほしい)
また守備としては、ボールを失ったらすぐにその正面に人が入って相手の攻撃をディレイする。そもそも、ボール周囲に人を集めるように設計しているため、ネガティブトランジションであっても、すぐに相手ボール保持者を囲みやすいし、そこで奪ったあと、次の攻撃につなぎやすいというメリットもある。これが川崎の攻撃と守備の好調につながっている。