■Todo es posible
久保について、ジネディーヌ・ジダン監督はリーガエスパニョーラ第31節マジョルカ戦後に「彼の将来を決めるのはもう少し先だ」と語るにとどまっている。ただ、ジダン監督が久保を2020-21シーズンのプレシーズンに帯同させる可能性は十分にある。そして、過去、ジダン監督の下でプレシーズンのアピールで居場所を勝ち取った選手がいる。マルコ・アセンシオだ。
アセンシオはエスパニョールへの1年のレンタル期間を経て2016-17シーズンにマドリーのプレシーズンに帯同した。そこでジダン監督の信頼を勝ち取り、一気にスターダムを駆け上がった。奇しくも、彼はマジョルカのカンテラーノだ。つまるところ、ジダン監督は色眼鏡で選手を判断しない。そこに久保が残る可能性を感じさせる。自分が欲するものを選手が提供するなら、どの選手であれ戦力に数える。それがジダンという監督だ。
そのジダン監督が久保の起用を考えるなら、インサイドハーフあるいはウィングだろう。昨季のプレシーズンにおいては、主にインサイドハーフに配置された。ジダン監督が久保に求めるもの、もっと言えばマドリーで久保に求められるもの。それは「即興性」に他ならない。現在のマドリーで、攻撃の選手に要求されるのは、そのポイントなのだ。
ジダン監督が補強で求めてきた選手は、即興でジャズを奏でられるようなプレーヤーたちだ。エデン・アザールはカリム・ベンゼマとすぐに息の合ったコンビネーションを見せた。負傷に苦しめられているアザールだが、ジダン監督の目利きは正しかったと言える。ジダン監督がポール・ポグバの獲得に固執したのも、ポグバがそういったタイプの選手だからだ。
用意された楽譜を読むだけではなく、即興的に演奏できる必要がある。攻撃においては、ある程度のメカニズムが整理された上で、残りの部分は個の能力に頼る。それがジダン・マドリーの現実だ。今季、マドリーではフェデリコ・バルベルデが台頭した。ただ、彼に要求されたのは守備のタスクだった。カゼミーロ(28歳)、トニ・クロース(30歳)、ルカ・モドリッチ(34歳)と高齢化するマドリーの中盤にダイナミズムがもたらされた。だが久保が攻撃の選手として採るべきアプローチはそれとは異なるだろう。
マドリーはロドリゴ、ヴィニシウス・ジュニオール、エデル・ミリトンがEU圏外選手の3枠を占めている。ただ、現在、ヴィニシウスがスペイン国籍取得に向けて動いており、可能性は潰えていない。先日、『マルカ』紙では久保がスペイン国籍を取得する可能性が議論の的になっていた。もちろん、久保には強烈なアピールが必要になる。しかし、彼は昨季もそうして1部の複数クラブの関心を引き付け、マジョルカ移籍を実現させた。Todo es posible(トド・エス・ポッシブレ)ーーすべては可能なのだ。その言葉を念頭に、いまは情況を見守るのみである。