■「勝ったチームは変えるな」は間違い?
それぞれに個別の事情はあるにせよ、チャンピオンが次々と倒れるのは“王者が陥る落とし穴”があるからだ。
王者がグループリーグで姿を消すたびに、国内外に「なぜ」の嵐が吹き荒れ、メディアやファンは血眼になって敗因を追究する。そのたびに決まって挙げられるのが、驕りや慢心、高齢化などだ。
前回王者が驕りや慢心、高齢化と無縁でいることは難しい。
というのも、スポーツ界には「勝ったチームは変えるな」という格言があるからだ。世界一になった選手や監督は英雄として扱われ、その地位を確実なものとなる。聖域となる選手もいる。こうなると、世代交代や戦術の刷新が難しくなるからだ。
例えばスペインは、優勝した10年南アフリカ大会は平均年齢25.9歳だったが、グループリーグで敗退した14年ブラジル大会は28.3歳。著しく高齢化したのは23人中、実に16人が連続出場を果たしたからだ。
「熟成された」という表現ができるが、言い換えれば変わり映えがしない。
過去ベスト8以下が一度もないドイツでさえも、そんな王者の落とし穴にはまった。
18年ロシア大会でゴールマウスに陣取ったのは、バルセロナで不動の地位を築いたテア・シュテーゲンではなく、負傷明けのノイアー。この起用法は、心境著しいサネの代表落ちと並んで疑問視された。
優勝した選手の経験値は捨てがたいが、彼らは次回確実に4つ歳を取る。一度勝った以上、勝利への意欲を持続することも決して簡単ではないだろう。
つまりワールドカップについては、「勝ったチームこそ変えろ」が正しいのだ。