「ポストコロナ社会とスポーツ観戦」(後編)
写真:西村尚己/アフロスポーツ

まさにいま、社会が激しく動いている。それに伴ってスポーツ観戦も大きく変わろうとしている。コロナウイルスは時代の変化のスピードを速めたのかもしれない。再開するJリーグを見通し、さらに、近未来のスポーツの姿を考える。

※前編はこちらから

■こだわった試合数の維持

 長期間にわたってトレーニング自粛が続いた後、選手たちの体調が万全なはずはない。通常なら、春先から徐々に気温が上がる中で試合をこなすことで体を暑さに順化させることができるのだが、選手たちは4か月も実戦から遠ざかっている状況であり、夏場にいきなり連戦を行うことはけっして望ましいものではない。しかも、ウイルス対策で試合中を除いてベンチでもマスクを着用しなければならないし、いつものように共用のボトルを使って水を飲み回しすることもできないのだ。

 プレーレベルが低下することは間違いないし、それ以上に心配なのは選手たちの健康だ。

 交代枠が5人に拡大されたとしても、飲水タイムを設けたとしても、猛暑の中の過密スケジュールは確実に選手たちの体力を奪うはずだ。「コロナウイルス感染者は出なかったものの、熱中症で体を壊す選手が続出」などということになったら元も子もないし、体力が消耗すれば免疫力も落ちて新型コロナウイルス感染のリスクも高くなってしまう。

 そんな事態を避けるために、Jリーグは抜本的な対策を講ずべきだったのではないだろうか。

 たとえば、シーズンの閉幕を来年春まで遅らせて暫定的に「秋春制」に変更してリーグ戦の期間を長くすることによって時間的な余裕をもたらすこともできたはずだし、大会形式の変更によって試合数を減らすことも可能だった。プロ野球(NPB)は本来なら各チーム143試合が予定されていたが、開幕が遅れたために120試合制に変更され、さらにオールスター戦も中止となり、セントラル・リーグはクライマックスシリーズ(CS)も中止した(パシフィック・リーグはCSは縮小して開催の予定)。

 Jリーグも、たとえば東西2地区に分けてリーグ戦を行うなどの方式変更によって試合数を減らすことは可能だったし、より極端なことを言えば1回戦総当たりにすれば試合数は半分に減らすことができた。

 プロ野球はオールスター戦という、スポンサーも付く大規模なイベントであるオールスター戦を中止した。同様に、JリーグもYBCルヴァンカップの中止もしくは大幅簡略化も可能だったのではないか。

 だが、Jリーグは例年通りに12月閉幕を目指して、J1が34節、J2が42節までという通常通りの試合数を維持することを決め、方式を変更して試合数は減らしたもののYBCルヴァンカップも実施することとした。

 もし、試合数維持にこだわった理由が放映権料やスポンサー料の確保といった財政的な理由だったとしたら、Jリーグの再開後の方針決定については疑問を呈せざるを得ない。こうしたJリーグの判断が正しかったのか否かは、シーズンが終了した時点で検証しなければならないだろう。

 いずれにしても、「再開後こそが正念場」なのである。

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