パンツ一丁の代表監督

 リヤドはアラビア半島中部ナジュド地方の砂漠の真ん中に位置しています。ナジュド地方はもともとサウジアラビアを建国したサウド家の本拠地で、建国後、彼らはここを首都にしてオイルマネーを注ぎ込んで近代都市を築き上げたというわけです。昼間の気温は45度以上。強烈な太陽が照り付けます。

 旅行をしていて面倒なのは洗濯ですが、リヤドでは心配ありません。湿度が10%くらいしかありませんから、下着やTシャツはジャブジャブと洗ってそのまま吊るしておけば、すぐパリパリに乾いてしまいます。

 リヤドは、サウジアラビアの中でも戒律が厳しいので有名な街です。

 ある日、フィリピン料理店で昼飯を食べているとアザーンが聞こえてきました。お祈りの時間は異教徒の店でも閉じなくてはなりませんが、僕はまだ食事中だったんです。するとフィリピン人店員たちは僕を2階の奥のテーブルに座らせて階段の扉を閉じて外から見えないようにしました。「本当は違法だけど、食事してていいよ」というわけです。

 空気が乾燥しているので夜は気温が下がりますが、20時半のキックオフ時でも気温35度・湿度15%。空気が乾燥しているので観戦メモの紙がパリパリになってすぐに折れてしまいそうでした。まるで、乾燥サウナです!

 サウジアラビアが2対1で逆転勝ちしたのを見てから、僕は日本の試合地であるUAEの首都アブダビに移動しました。ところが、こちらは一転、湿度が高くて蒸し風呂のようなコンディションでした。

 キックオフが17時40分と早い時間だったため、気温は39度もあり、湿度も85%でした。座っているだけでも気持ちが悪くなるような蒸し暑さです。偵察に来ていた韓国の車範根(チャ・ボングン)監督は短パンだけの上半身裸で記者席に座っていました。観戦メモは、こんどはベタベタになって頁を繰るのが一苦労です。

 こんなコンディションでは選手たちに「走れ、走れ」と言うのは酷でしょう。名波浩は前半のうちにフラフラになってしまいました。もっとも、試合終盤にはUAEの選手もすっかり足が止まって、むしろ日本選手の方が動けていましたが……。

 僕がこれまで観戦してきた6401試合の中で最も暑い試合でした。

UAE対日本の一般入場券。ニッサン車の大手ディーラー「アルマサウード社」が5万枚を買い占めて、市民に無料配布したが、それでも空席が目立った。
UAE対日本の一般入場券。ニッサン車の大手ディーラー「アルマサウード社」が5万枚を買い占めて、市民に無料配布したが、それでも空席が目立った。
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