サウジアラビア対クウェートの入場券
サウジアラビア対クウェートの入場券
前回、ワールドカップ・フランス大会のアジア1次予選取材に訪れたサウジアラビアで“放置プレー”をたっぷり楽しんだ後藤さん。同最終予選の取材では、これまでに経験ない過酷なプレー(?)を堪能することとなった。

1419年のサウジアラビア

 緊急ビザをもらって入国したサウジアラビアのジッダは古い港町で、城壁に囲まれた旧市街には木造建築が建ち並び、美味しい地元料理の店もあったので、とても気に入りました。もっとも、最近は再開発で旧市街は取り壊されてしまったようですが。

 ムスリム(イスラム教徒)にとって1日5回の祈りが義務になっています。時間になるとあちこちのモスクの尖塔(ミナレット)から「アッラ~フ、アクバル(神は偉大なり)……」と人々に祈りを呼びかけるアザーンが聞こえてきます。すると、人々はそそくさと近くのモスクに入って祈りを捧げるわけです。

 なにしろ、聖地マッカ(メッカ)からわずか50キロのジッダです。他のどんな街で聞くアザーンよりも荘厳に聞こえました。

 マッカ……。もちろん行ってみたかったんですが、マッカには異教徒はいっさい入れません。ジッダのスタジアムのバックスタンド裏の高速道路には何気なく「マッカ」と書いた案内標識が出ているんですけどね。

 ジッダで試合を見てから僕は首都リヤドに移動して、アルヒラルやアルナスルといったクラブを取材し、国内リーグを観戦しました。そして、サウジアラビア・サッカー連盟にも何度か顔を出しました。この国のサッカー近代化を担う若手役員たちの話を聞きに行ったんですが、最大の目的は実は「顔つなぎ」でした。顔をつないでおけば、いつか再びこの国を訪れたくなった時には簡単にビザの申請を依頼できるというわけです。

 いつか、再び……。その機会は、わずかに半年後の1997年の9月に訪れました。

 フランス・ワールドカップ最終予選。日本は初戦でウズベキスタン戦に6対3で快勝しましたが、次の週には試合がなく、次戦は2週間後のUAE戦でした。5チームのリーグ戦なので、毎週1チームがお休みになるのです。そこで、日本の試合がない週にサウジアラビア対クウェートという好カードを見に行こうと思ったのです。会場はリヤドです。

UAE対日本の取材許可証
UAE対日本の取材許可証

 今度は「顔つなぎ」してあったので、サウジアラビア連盟に招待者になってもらって東京・六本木の大使館で正規のビザをもらい、“放置プレー”などなしで堂々と入国。半年前はまだ1418年だったヒジュラ暦は1419年になっていました。

 中東には何度も行ったことがありますが、9月という夏の時期に行ったのはこの時だけです。現地の人たちは「暑さもだいぶ和らいだ」と言っていましたが、これは本当に暑かった!

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