■サッカーの“ラグビー化”
杉山 特に今年1月のサウジアラビア戦(AFC U-23選手権)のね、選手交代。なんで、あんな遅い時間(後半46分)に2人も。1対1の状況から最後に逆転されて2対1にされて負けたんだけど、1対1の状況に満足していたわけ? って。逆転されてから交代選手を入れたんだけど、なんでそこまで引っ張るのかと。もうロスタイムですよ。さすがに遅いよと。何がしたいか、こちらにメッセージとして伝わってこないわけ。そうすると、森保では心配だって話になっちゃうわけですよ。
でも試合は、運の要素はものすごくあるから。グループステージの最終戦のカタール戦(1-1)では、前半終わりの田中碧選手のタックルが1発レッドを取られた。僕はあのタックルは結構、重い反則だと思うけど、赤か黄色かは分からない。でも、不運は不運だよね。なんだけど、サッカーは、運、不運はすごくあるスポーツで、敗因が不運なんていう試合は当たり前のようにある。森保監督を責める前に、これはただただ不運だったよねっていう試合もあるわけですよ。
戸塚 あるある。
杉山 でも、それとサウジ戦とはまた違うんですよ。あの交代の采配では、ダメだよ、と。ああいうことをすると、ベンチは盛り上がらないんですよ。だってメンバーは3人かえられるのに、1人交代して、残り2人はたった1、2分しか出られないんだから。AFC U―23選手権って、五輪の予行演習みたいなところでしょ。あれが、東京五輪本番だったらどうするの、っていう話。五輪はフィールドプレー16人しかいないわけですよ。少ない駒をどうやってうまく使っていくか。そういう意味では手倉森さんの方が、全然上手かったと思う。僕らはそういうところで、五輪のサッカー見ますが、他の国の監督はやはり上手いですもん。
戸塚 無理がきくや選手は無理きかせて、そうじゃない選手は上手く回すっていうところですね。
杉山 特にフォワード系はうまく回さないとね。後ろはね、あらかた固めていいと思うけど、前の方はぐるぐる回していかないと。
戸塚 今まで森保さんが、采配の瞬発力が求められたのは、日本代表ではアジアカップ。アンダーカテゴリーではこの前のAFC U―23選手権、この2つです。あとは瞬発力がなくても勝てた相手、またはテストマッチでした。だからここの2つで、瞬発力とか、試合中の修正力みたいなものを見せてくれなかったっていうのが、一番キツいところですね。
杉山 でもね、人は変われるんですよ。ちょっとしたことで。あ、そうかって思えば、変われるんです。サッカーの技術が上手くなるのとちょっと違う。リフティングが10回しかできない人は急に1000回できない。これは無理なんですよ。だけど、サッカーの監督は、ちょっとしたことで変われる。特に森保さんとかはそう思う。だから、森保さんに僕の原稿を読んでもらってるとは思えないけど、もう、本当に伝えたいよね。ここをこうやってくれ。これを変えれば、あなたは全然良くなるじゃん、っていうのはあるし。もっとこうやって出れば良く見えるよとか。だから、僕は代表監督のシナリオライターやりたいぐらいだよ。
――(笑)。
杉山 でも、そういう時代に、やはり森保さんの横には、彼以上の人をつけておかないとダメなんですよ。だから、サッカー協会は森保監督を押し出すのはいいと思うんだけど、横に本当に優秀な副監をつけるべき。昨年の横浜F・マリノスの、ポステコグルー監督の横に、現・清水エスパルス監督のクラモフスキーがヘッドコーチとしていたように。
――クラモフスキーが横浜F・マリノスの攻撃サッカーを牽引したんですよね。
杉山 僕は今年、清水のサッカーに注目していますが、開幕戦も試合はボロ負けだけど、サッカーはめっちゃ良かった。最終的な結果がどうなるかは分からないけどね。
でも、今はベンチもコンビが重要なんです。あとはスタジアムの上から俯瞰で見て、試合の状況をトランシーバーとかでピッチに伝える時代です。だから監督も、一人でやる時代じゃなく、アメフト的になってきてるんです。だから、代表のサッカーも森保さん一人に任せるんじゃなくて、“森保グループ”みたいにして、隣には森保さんよりもっと若くてもいいので、彼より優秀だと言われるぐらいの人を置いたほうがいいと思うんです。
戸塚 ロシアW杯のあと、監督は日本人にしたいっていうのがみんなあったわけじゃないですか。だから、監督は日本人でもいいから、コーチに外国人っていうのは全然ありだと思います。
杉山 ロシアW杯の前はハリルホジッジで、それがダメで西野さんが結果オーライだと思うけど、結果が出た。それで、やっぱり日本人監督はいいなとなって、森保さんになった。それで今度、森保さんがダメだとなると、今度はやっぱり外国人じゃないと、みたいな話が出てきちゃう。どんな代表監督が良いかというのは、そういう波があるものなんだろうけど、僕は、日本人でも外国人でもどっちでもいいと思っている。そうじゃなくて、求められるものっていうのは何かっていう話で。サッカーが良ければいいんだから。今は特に、采配もチームでやる時代だと思う。監督一人のカリスマ性にイチかバチかで期待するんじゃなくて。
戸塚 多分に、ラグビー的な感じですよね。監督がいて、ヘッドコーチがいて、オフェンスコーチ、スクラムコーチがいて。
杉山 そうそう。そういう分業っていうのは非常にありじゃないかな。
戸塚 クラブチームではテクニカルな分析はどこもやっていますが、そうしたことも込みで、代表チームも役割が細分化されてもいいような感じがしますね。
――では、森保監督だけ捕まえて、良い悪いという議論も良くないですか?