悪漢登場!
サンロレンソの試合を見た翌日、つまり2001年4月8日はボカ・ジュニアーズとリーベルプレートとのスーペルクラシコを観戦しました。この日から、当時『サッカー批評』の編集長だった半田雄一氏と一緒です(実はサンロレンソの試合にも誘ったんですが、半田氏は「疲れている」と言ってホテルで寝ていました)。
試合はボカが3対0で快勝。ボカにはリケルメ、リーベルにはオルテガやサビオラがいる豪華な試合でした。敗れたリーベルのインチャどもはスタンドのあちこち放火して行きましたが、火はすぐにスタンド屋根の上に備え付けてある放水銃で消し止められてしまいました。スタンドにはディエゴ・マラドーナも現われ、この試合についても書きたいことは満載なのですが、ここでは割愛します。
翌日の月曜日(4月9日)、僕と半田氏はボカ地区を歩いてみました。スタジアムを見てからイタリア・レストランで食事(ボカはイタリア系がひと際多い街です)。ワインを飲んで良い気分で歩いていると川辺に出ました。
マタンサ川。通称「リアチュエロ(小川)」。対岸はアベジャネーダ市(インデペンディエンテとラシンの本拠地)です。ボカとはスペイン語で「口」。つまり、この川の「河口」ということからつけられた地名です。工場地帯なので水はどす黒く濁っており、ガイドブックなどでよく写真を見かけるアベジャネーダ橋の黒いシルエットが見えます。鉄骨製の可動橋で船が通る時だけ橋桁が上がるようになっているんですが、もう動かなくなって橋桁は上がりっぱなしです(最近、改修されたそうですが)。
橋の手前で渡し船を見つけた半田氏が「乗りましょう」と言う……。物騒な地区なので僕は「嫌だ」と言ったのですが、半田氏は「どうしても」と言う。「仕方がない、向こう岸に着いたらそのまま引き返す」ということにして船に乗りました。
しかし、着いてみるとやはり歩きたくなってくるのが人情というものです。で、100メートルほど歩いて広場の辺りまで来るとピストルを持った2人組が現われました。