■スコットランドの超名門も……

 イタリアでは、パルマとナポリが同じように巨額の負債を抱えて破産・消滅を経験している。

 歴代オーナーの乱脈経営が祟って2015年に破産・消滅したパルマでは、所属する全選手が移籍金が発生しない自由契約選手となり、ほぼ全員が他チームへと去っていった。

 スコットランド・リーグで最多優勝(54回)を誇る超名門のレンジャーズは、2012年、推定で1億ポンド(当時の為替レートで約130億円)を超える負債を抱えて破産申請。勝点10の剥奪という罰則とともに、実質4部リーグへの強制降格を余儀なくされた。

 それでもレンジャーズが消滅という最悪の事態を免れたのは、新オーナーがすぐに現れたためだ。イングランド人の元プロ選手で、投資で財を成したチャールズ・グリーンという人物を中心とする投資家グループがレンジャーズを買収し、超名門クラブの伝統は保たれた。

 新生レンジャーズは4部から最短2年で2部に這い上がると、そこからさらに2年でトップリーグへと返り咲く。そして、再昇格から3年目の2018ー2019シーズンには元イングランド代表のスーパースター、スティーブン・ジェラードを監督に迎え、宿敵セルティックから覇権を奪回すべく態勢を整えつつある。

 イングランドでは、日本代表岡崎慎司らを擁して2015ー2016シーズンに奇跡のプレミアリーグ優勝を成し遂げたレスター・シティが、その14年前の2002年に経営破綻している。当時のレスターは実質2部に在籍していたが、2部リーグのテレビ放映権を持っていた『ITVデジタル』が倒産。そのテレビマネーを失ったことでレスターは資金繰りに窮し、破産に追い込まれた。

 この時、レスターを救ったのは、クラブOBでレジェンドのガリー・リネカーだ。自らも出資者となって投資家グループを結成し、愛する古巣を存続させたのだった。その後、2010年にタイ人の大富豪、ヴィチャイ・スリバッダナプラバ(2018年10月にヘリコプター墜落事故で他界)が経営権を取得し、奇跡の優勝はファンから愛されたこのタイ人のオーナーが心血を注いだその美しい成果だった。

 新型コロナウイルスのパンデミックによってヨーロッパ各国のリーグ戦は中断を余儀なくされているが、このコロナ危機は各クラブの財政を直撃。ドイツではブンデスリーガの1部と2部を合わせた全36クラブ中13クラブに“コロナ倒産”の可能性があると、サッカー専門誌『キッカー』は伝える。フランスでは、このままでは半数のクラブが経営破綻すると予測する声がある。

 いまだ終息の見えない新型コロナウイルス。新たな存亡の危機を迎えるクラブが出てしまうのか――。

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