生涯観戦数は6400試合を超え、世界中のあらゆる場所でサッカーを観戦してきた後藤健生さん。その貴重な体験をつづる連載「蹴球放浪記」。シンガポールからミャンマーへ渡った後藤さんは、旧首都のヤンゴンから、新首都ネピドーまで、6時間をかけてバスで移動した。特別なことではない。サッカー旅は世界中、バスが主な移動手段なのだから。
ハビエル・アギーレ監督が就任してすぐの2014年10月。日本代表はシンガポールでブラジルと対戦しましたが、ネイマール1人に4点取られて完敗してしまいます。その後、僕はミャンマーに向かいました。AFC U-19選手権を観戦するためです。
南野拓実や井手口陽介を擁するU-19日本代表は準々決勝で北朝鮮と対戦。何度も決定機を作りましたが、北朝鮮は守備を固めてカウンターを狙う「日本対策」を徹底。日本のチャンスはGKチャ・ジョンフンにことごとくストップされてしまいます。前半37分に先制された日本は83分に南野のPKで追いつきましたが、PK戦では5人目で蹴った南野が失敗して準々決勝敗退となり、ワールドカップ出場を阻まれました。
ちなみに、開催国のミャンマーはベスト4に入って世界への切符を獲得しました。かつての強豪国ミャンマーも最近はすっかり弱体化していただけに「世界大会出場」は画期的な出来事。最大の都市(旧首都)ヤンゴンで行われたカタールとの準決勝では満員の観客すべてが決勝進出を願って祈りを捧げる異様な雰囲気で、僕は日本がワールドカップ初出場を目指していた1997年のアジア予選を思い出しました。
北朝鮮戦との準々決勝が行われたのは首都のネピドーでした。
軍事政権が建設して2006年に突如移転を発表した新首都で、国家元首だったタンシュエ将軍が星占いで決めたという説まであります。ヤンゴンからの空路は運行が不定期なので移動にはバスを利用しました。片道約6時間のバス旅です。