2014年。FIFAの会長はUEFAと戦うことに半生を費やしてきたジョゼフ・ブラッターであり、UEFA会長のミシェル・プラティニが翌2015年のFIFA会長選には出馬しない意向を表明したことで2019年までのFIFA会長の座を約束されていた。世界サッカーの「革命」ともいうべき、「放映権フランチャイズ」を実行するには最高のタイミングだった。AFCが「アジアではこうしています」という形を示して提案すれば、ブラッターなら「宿敵を倒す絶好の機会」と飛びつくのではないかと、私は考えていたのだ。

 しかし2015年夏、FIFAとブラッターは、40年間の膿を一挙に出すように自壊した。新会長に前UEFA会長のインファンチーノが就任し、FIFAとUEFAの関係も劇的に変わった。

 そしてJリーグは、私が村井チェアマンと話したシーズン入り直前に明治安田生命と「タイトルスポンサー契約」を締結して経営危機を脱出、2017年にはダゾーンがそれまでの2倍に当たる額で放映権を買ったことで、(Jリーグにとっての)状況はまったく変わってしまった。さらに放映権を買ってくれた国の選手を「外国籍選手」扱いしないというルールを作り、Jリーグは東南アジアを中心に年ごとに放映権販売を伸ばしてことしは20億円もの収入を得る見込みだった。

 「サッカーの放映権という面で、日本は欧州から利益を吸い上げられるだけの『植民地』になっている。その日本が東南アジアを利益を吸い上げるための『植民地』にするなら、それは昭和の前半、アジアを植民地化しようとした日本の姿と同じではないか」

 村井チェアマンと話したとき、私はそんな表現を使った。いま、東南アジアの発展途上のサッカーマーケットから年に20億円も吸い上げるのは間違っていると、私は思う。欧州に次いで日本の「植民地」となりつつある東南アジアのプロサッカー、サッカー市場は、どこに生きる道を見つけたらいいのだろうか。

 Jリーグは20億円をそれぞれの国のプロリーグに戻し、AFCに「放映権フランチャイズ」の緊急提案を行うべきだ。新型コロナウイルスにより、世界中でこれまでのプロサッカー事業が危機に瀕しているときだからこそ、そうした働きかけが大きな意味をもって世界に迎えられるのではないか。

 「放映権フランチャイズ」は、21世紀の最初の20年間で戻りようもないところまでいってしまった世界のサッカーの状況を根本からひっくり返す「革命」である。私は、その国のサッカーファンがサッカーにかけるすべてのお金は、その国のサッカーの発展のために使われるべきだと考えている。

 読者の皆さんは、どう思うだろうか。

 

 

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