――チッチはブラジル最高の監督の1人と言われています。そのチッチ自身は、自分をどんな監督だと思いますか?

「ハハハ。自分のことを明確に表すのは難しいな。自分がどうなろうとしているか、だったら話せるけど。もし、誰かが何らかの理由でチッチを見て、チッチが何を言ったか、それを言った時の、チッチの態度や振る舞いはどうだったか、それにより、その人が私に信頼を置けると思ってくれるなら、とても幸せだよ。

 私は監督として勉強中だ。年齢が何歳だ、監督歴が何年だ、何試合を指揮した経験がある、というのは関係ない。人は毎日、一つずつ、小さなレンガを積み上げていくものなんだよ、その仕事の真のプロフェッショナルでありたいならね。

 我々はミスからも学ぶ。何かを間違ったのなら、それを認め、改善することに、何も問題はない。それに、他の人の成功からも学ぶものだ。そうしてミスや他の人の成功を認めながら、さらなる成功を求めていくんだよ」

――では、チッチの監督としての哲学とは?

「プロとして、私が絶対にこだわることが2つある。2つの信念を持っていると言ってもいい。一つは練習の厳しさ。量ではないよ。2時間だ、3時間だという時間の長さでもなく、練習の質の高さだ。練習でのフィジカル的、およびメンタル的な熱心さ。それが、チームのコンディションを左右する。

 例えば、練習の強度を上げたい時や、判断やプレーのスピードをあげたい時、ピッチのサイズを小さくする、タッチの回数を減らす、というのがある。私の場合、そのピッチのサイズをさまざまに変えたり、タッチの回数をさまざまに変える。強度を上げたり、下げたりするためにね。練習量は減らし、強度を上げるのが良いと思っているんだ。私が練習を延長してまで、長時間やることは、ほとんどない。

――そして、もう一つは?

「もう一つは、選手の基本的な技術のクオリティだ。技術力と、インテリジェンスのレベルが低い選手がいれば、どうしたって、勝者のチームを構築することはできない。

 監督が練習でやらなければならない最大の仕事の一つは、選手の持つ技術やフィジカル、試合でのインテリジェンスを見極めることだ。そして、チームを構成する上で、それぞれが実践できる役割に、選手を当てはめていく。そのポジションの中で、選手が気持ち良くプレーできるように。そういう形で選手の長所を組み合わせることによって、調和の取れたチームになり、闘争力が増していくんだよ」

 

※第2回に続く

(この記事は2017年6月13日に発行された『サッカー批評86』(双葉社)に掲載されたものです)

チッチ

1961年5月25日生まれ、リオグランデ・ド・スール州出身。28歳で現役を引退した後、指導者に。グレミオ、パルメイラスなど名門クラブの監督を歴任する。2010年、コリンチャンスの監督に就任。11、15年にブラジル全国選手権、12年にはコパ・リベルタドーレスで優勝し、南米代表として出場した同年のクラブW杯でチェルシーを下して世界一に輝く。16年6月、ドゥンガ前監督の解任を受けてブラジル代表の監督に就任。そこから公式戦8連勝を記録し、4試合を残して最速での南米予選突破を果たす。

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