グアルディオラ退任後、故ティト・ビラノバ監督、ヘラルド・マルティーノ監督、ルイス・エンリケ監督と、毎年、指揮官が交代した。安定感のない中、バルセロナは2013年夏に未来のスタープレーヤー獲得に踏み切る。ネイマール・ジュニオールである。レアル・マドリーとの争奪戦を制して、バルセロナはネイマールの獲得を決めた。しかし、その代償は大きかった。
当初、移籍金5710万ユーロ(約68億円)でネイマールを獲得したとされていたバルセロナだが、その実は異なるものだった。ネイマールの獲得資金は、合計で2億ユーロ(約240億円)に上ったといわれている。
結論から言えば、バルセロナのネイマール獲得は失敗だった。もちろん、ルイス・エンリケ監督の下で、2014-15シーズンに3冠を達成した事実は無視できない。だが、ネイマールの獲得で、バルセロナは優れた選手を「金で買う」方向にシフトしてしまった。それはグアルディオラが積み上げたカンテラ重視の演繹法、そしてクライフイズムとの完全なる決別を意味している。
お金で得た選手は、後々、お金で去っていく。また、その穴を埋めるために、お金を費やす。負の連鎖が、始まろうとしていた。
逆に、若く才能豊かな選手を早い段階で引き入れ、育てていくという手法は軽視されるようになっていった。育成年代から伝統の4-3-3、ポゼッションを徹底して叩き込み、それをトップチームで体現させる。トップからカンテラまで同じ基本のプレーモデルを構築することで、「段差」を少なくして昇格をスムーズにするという、賢明でいて費用対効果抜群の方法は採られないようになっていく。
さらに、ネイマール獲得時にバルセロナが不正を働いた疑いが持たれ、事は裁判騒動に発展。ロセイが会長職を辞任した。副会長を務めていたジョゼップ・マリア・バルトメウが会長に昇任したが、クラブの混乱を収めるのは容易ではなかった。