2020年、コロナウイルスの世界的な流行に見舞われたヨーロッパ。
プレミアリーグもセリエAも試合を中止し、リーガエスパニョーラは中断期間の無期限の延期を発表した。
バルセロナもクラブの全活動停止を早々と発表したが、この未曾有の事態が発生する以前から、チームには異変の兆候があったという。
近年、バルセロナが完全にタイトルに見放されているわけではない。だが地元メディアとバルセロニスタ(バルセロナファン)が盛んに論じているのは、「なぜチャンピオンズリーグで優勝できないのか」という点だ。 バルセロナが最後にビッグイヤーを掲げたのは2015年だ。しかしながら、それ以降、欧州王者の称号から遠ざかっている。
いったい、何が起きているのか――。世界屈指の人気チームの光と影を追う。
会長選と狂い始めた歯車
2008年から2012年まで、バルセロナは間違いなく欧州で最高のチームだった。ジョゼップ・グアルディオラ監督の指揮下、14個のタイトルを獲得。だが、クラブ内では異変が起きていた。2010年に行われた会長選で、サンドロ・ロセイが当選したのだ。
前任者ジョアン・ラポルタとロセイの違いは決定的だった。最も大きな違いは、クライフイズム(クライフ主義)の受容の仕方だ。故ヨハン・クライフは、バルセロナの創造主といえる存在である。ラポルタは彼を全面的に支持していた。グアルディオラとチキ・ベギリスタインを要職に就かせた背景には、クライフのアドバイスがあったといわれている。
一方、ロセイは、ベギリスタインの代わりにアンドニ・スビサレッタをスポーツディレクターとして迎えた。また、ロセイの会長就任で、クライフが名誉会長職を「剥奪」される格好でクラブを去ることになった。グアルディオラに関しては留任こそしたものの、ラポルタ時代ほどクラブからのサポートを受けられなくなった。
会長、名誉会長、監督、スポーツディレクター、クラブを強化する上で欠かせない者たちが、ある種の権力闘争によって、空中分解しつつあった。バルセロナは一枚岩になっていなかった。その状況に限界を感じ始めていたグアルディオラ監督が2011-12シーズン終了時に退任を決断。深い闇が、バルセロナに迫っていた。