――コンフェデ杯の成功がもたらした慢心。理由はそれだけでしょうか。
「コンフェデ杯後の1年で選手達を取り巻く状況が悪い方に変わっていた。GKのジュリオ・セザールは欧州リーグで移籍先が見つけられず、サッカーが盛んでないカナダリーグでプレーし、バルサの右SBダニエル・アウヴェスは不調に陥り、DFダビド・ルイスはチェルシーでリザーブになっていた。左SBマルセロもレアル・マドリードのリザーブ。MFルイス・グスタヴォは、グアルディオラ監督の就任とともにバイエルンをクビになった。MFパウリーニョはコリンチャンスからトッテナムに移籍したものの上手くいかず、MFフッキはゼニトのリザーブ。FWフレッジは、大会の年に怪我で3カ月戦線離脱してフィジカルコンディションも試合勘も100%ではなかった。ネイマールはセレソンと異なり、バルサでは右ウィングとしてプレーしていた。MFオスカルはチェルシーのリザーブ。唯一、チアーゴ・シウバだけはパリSGの正DFだった。わずか1年で主力の選手達のクラブでの状況がこれほど変わってしまったことで、厳しい戦いにならざるを得なかった。クロアチアとの初戦は3−1のスコアで勝利したとはいえ、誰も納得がいかない内容だった。2戦目のメキシコ戦はさらに厳しく、相手の方が勝てそうな試合だった。ノーゴールというのも不安材料だった。カメルーン戦では、やっと4点入れて調子が上がるかと思いきや、チリ戦の苦戦。ドローに持ち込んだとはいえ、負けてもおかしくない内容だった。PK戦にもつれこんで勝てたのはGKのジュリオが冴えていたからだ。コロンビア戦はネイマールの負傷に見舞われたが2 −1で勝利。しかし、主力ネイマールの戦線離脱は大きかった。チームとしての完成度も高かったドイツ相手に、ブラジルはホームで完全に叩きのめされた。ブラジル国民にとってこれ以上無い悲しい結末はなかっただろう」
※第4回に続く。
(この記事は2017年6月13日に発行された『サッカー批評86』(双葉社)に掲載されたものです)