2014年「ミネイロンの悲劇」は前年に予告されていた? 写真/渡辺航滋
2014年「ミネイロンの悲劇」は前年に予告されていた? 写真/渡辺航滋

(この記事は2017年6月13日に発行された『サッカー批評86』(双葉社)に掲載されたものです)

文◎マルタ・エステーヴェス Martha Esteves

翻訳◎大野美夏 Mika Ono

写真◎渡辺航滋 Koji Watanabe

ブラジルのレジェンド。その説明はもはや不要だろう。Jリーグ鹿島アントラーズに伝統となる「イズム」を注入し、日本代表監督として2006年ドイツW杯にも出場した。そんな日本サッカーの功労者でもあるジーコに、セレソンの「これまで」と「これから」=35年の所感をW杯を軸に語ってもらった。

エッセンスはありつつ結果に見放された2010年~2014年W杯

――2010年南アフリカW杯では、準々決勝でオランダと対戦し1-2で逆転負けを喫しました。

「2010年W杯については、そんなに試合を見ていないのであまり話せないが、ブラジルはそれほど悪いチームだったとは思わない。一方、優勝したスペインは数十年に一度とも言える人材豊作の年に当たった。あれほど規格外のハイレベルな選手が揃っていたから、優勝は自然についてきた。ブラジル対オランダ戦を覚えているが、前半は悪くなかったんだ。だが、失点からメンタルの崩れが始まった。フェリッペ・メロが頭に血が上り、退場になってからゲームで無くなってしまった」

――このあたりから、個の時代から少しずつセレソンの衰退が始まったのではないか、と感じています。ブラジル代表選手が次々とヨーロッパの強豪チームへと移籍し、「ブラジル代表自体が、完全にヨーロッパ化」したことと、何か関係はあるのでしょうか。

「私は、ブラジルサッカーがそのエッセンスを失ったとは思っていない。海外でプレーしているとはいえ、元々はブラジルでサッカーを覚えたブラジル人選手たちなんだから。欧州化されたというわけではない。このW杯で急に欧州でプレーする選手が増えたわけでもないし、選手達はW杯と関係なく良いプレーをしている。関係ないと思うよ」

  1. 1
  2. 2
  3. 3