強化部と監督のタッグで下克上
昨季にチーム最多のリーグ戦10ゴールを決めたオナイウ阿道は、移籍期間が終了して退団(レンタル元の浦和レッズに戻らず、横浜F・マリノスへ移籍)。昨年はシーズン途中に藤本憲明がヴィッセル神戸へ移籍した穴を埋め切れていなかっただけに、得点力アップへ片野坂監督の手腕が見ものだ。
片野坂監督を、目利きの強化部が支える。オナイウ、小塚和季といった、片野坂監督のサッカーでうまく前線にはまった昨季の新戦力は、フロントがプレーを見極めてJ2クラブから獲得した選手だった。今季の攻撃的な新戦力はJ2に加え、出場機会を欲するJ1経験者を迎えている。知念慶はタレントがそろう川崎フロンターレで昨季5得点を挙げており、渡大生(←サンフレッチェ広島)も年代別日本代表の経歴を持つ。
Jリーグから開示されている最新の各クラブ決算データである2018年度版によると、大分のチーム人件費は、当時所属していたJ2でも13番目となる4億8200万円に過ぎなかった。サッカーの世界では、資金力がチーム力に直結すると言われる。だが、選手としてもプレーし、引退後は大分一筋で強化に携わる西山哲平強化部長と片野坂監督によるタッグが、またも下克上を起こすかもしれない。
知念はルヴァンカップに続き、セレッソ大阪とのリーグ開幕戦でも1トップで先発出場。ポストを叩く一撃など、惜しいシュートをいくつか放っていた。町田也真人(←松本山雅)も先発し、渡に加えて野村直輝(←徳島ヴォルティス)も途中出場と、他クラブからの加入選手が早くも新天地デビュー。競り負けたもののC大阪を苦しめ、“開花”の期待を抱かせる。
5シーズンにわたって大分を率いた監督は、過去2人しかいない。ペリクレス・シャムスカ監督はナビスコカップ(現ルヴァンカップ)優勝を果たし、田坂和昭監督も2年でチームをJ2からJ1へと引き上げた。だが、ともに5シーズン目には途中解任の憂き目に遭っている。
片野坂監督がその“ジンクス”を破れば、大分は新時代へと突入する。