クラブの未来を握る若い選手たち

 また、送り出したメンバーにも今季の方針がくっきり表れた。アンカーに入ったのは、18歳の松岡大起だった。下部組織のU-18に所属していた2018年から2種登録され、昨年3月には17歳ながらリーグ戦初先発でフル出場し、シーズン計23試合に出場。今季もここまでルヴァン杯、リーグ戦と先発起用されている。さらに、今季U-18から昇格したばかりの本田風智も、ここまでの公式戦2試合に先発。堂々たるプレーぶりで、育成型を目指すクラブの象徴となり得る可能性を感じさせた。

 金明輝監督は鳥栖での引退の翌2012年、クラブのアカデミーで指導者への道を歩み始めた。前述の松岡は、アカデミー時代の教え子だ。

 鳥栖のアカデミーは近年、躍進が目覚ましい。U-15は2017年に日本クラブユース選手権と高円宮杯全日本U-15選手権ともに初優勝を果たし、その年の2冠を獲得している。今年の高円宮杯でも準優勝したが、その鳥栖U-15は現在のトップチームと同じフォーメーションとチームとしての戦い方を共有していた。U-18は昨年、同年代最高峰のリーグであるプレミアリーグ昇格を果たしている。年代別の日本代表選手も輩出するなど、鳥栖は他のビッグクラブに負けない育成組織を擁するに至っている。

 外部からの新戦力も悪くない。昨季のJ2で結果を残した小屋松知哉(←京都サンガS.C.)は、川崎F戦でもチャンスをつくり出していた。大卒ルーキー森下龍矢(←明治大学)も、即戦力として戦えることを感じさせた。この20代半ばに入ろうとする選手たちと10代の若い力が今季の、そして今後の鳥栖の運命を大きく左右しそうだ。

 クエンカ(→ベガルタ仙台)、小野裕二(→ガンバ大阪)、高橋祐治(→柏レイソル)と、昨季の主力が抜けた穴を埋めるには至らない。だが、下部組織に集まった優秀な選手をトップへつなげていく流れを継続させるためにも、今季のJ1残留は非常に重要になってくる。

 ピッチ上の成績が、クラブ全体の今後の命運を握る。過酷なタスクが、今季のチームには託されている。

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