「この場で具体的な日本人選手の名前を挙げることはできないよ。なぜなら、すぐにニュースになるからね。だが、さっき話したように(インタビューの準備をしている世間話の間に、モンチは何人かの日本人の名前を挙げていた)、興味のある日本人選手達はいることはいるとだけここでは言っておくよ」

 と、モンチは日本人の名前が補強リストにある可能性を示唆した。また、アジア選手獲得の際に必ずセットとされるスポンサーに関しては特に考えていないと話した。

「スポンサーはもちろんクラブにとってありがたいことだが、SDとしてそれは考えていない。マーケティング部門が考えることだ。スポンサーがつくのは大抵獲得してからの話。自分は特にスポンサーのことは考えていない」

 現場とマーケティングは別物であることをモンチは明確にした。だが、彼が今後かなえたい夢の一つは「日本を訪問すること」だという。日本食は、モンチがどの国に行ってもホテルのレセプションでその街一番のレストランを探すほど大好きなものだそうだ。

 ぜひ日本で美味しい日本食を堪能したいと思っており、来夏ツアーが行われるなら絶対に行きたいねと話はしていたが、モンチは残念そうにこう語った。

「過去にも日本に行くチャンスは一度あった。だが、その時もSDという仕事柄、会議や交渉のためツアーに参加することができなかった。夏の移籍市場はチーム形成の上でとても大事な時期だ。だから、時間的なことから多分、ツアーがあったとしても参加することができないと思う。皆が休暇を楽しんでいる時にも全く休みがないこと。それが唯一この仕事をしていて満足できないことかな。まあ、行けない時は清武にセビージャで美味しい日本食レストランへ招待してもらうようにするよ」

ラモン・ロドリゲス・ベルデホ
通称モンチ。人生の半分以上となる29年をセビージャで過ごしているスポーツゼネラルディレクター(肩書きは本人談)。10年間の現役時代はマラドーナやシューケルといった世界のスーパースターとロッカールームを共有していたが、今では欧州のビッグクラブがロッカールームのメンバー編成を託したいと願うスーパーSD。発掘した無名選手がチーム退団時に高額の違約金をクラブに残していくことから、セビージャの現代のミダス王(ギリシャ神話に登場した触るもの全てを金に変えることができた王)と経済誌からも賞賛を受けている。

(この記事は2016年10月28日に発行された『サッカー批評83』(双葉社)に掲載されたものです)
 

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