■ 忘れられた田舎町。「タラ軍団」と名乗るフリートウッドの哀愁

 フリートウッドはイングランドの北西部、ランカシャー州の北西、アイリッシュ海に面したさびれた港町である。人口は約2万6000人。ランカシャー州を東西に貫いて流れるワイヤ川の河口に位置するが、フリートウッドを北端とする「フライド海岸平野」はワイヤ川が運んだ砂を沿岸流が運んだ「砂州」であり、最も高いところ(最北部にある「マウンド」と呼ばれる公園になっている)でも海面から24mの高さにすぎない。

 町は20世紀初頭に最盛期を迎える。アイルランドとの中間点にあるマン島へのフェリーの発着港として大きなにぎわいを見せる一方、漁業が大きく栄えたのである。北海や遠くアイスランド沖に出漁するトロール漁船の基地としてにぎわい、当時は漁業人口だけで1万人近くに達していたという。英国人たちが最も多く消費する「タラ」の水揚げでよく知られ、フリートウッド・タウンFCのニックネームが「フィッシャーマン(漁師)」であり、サポーターたちが「コッド・アーミー(タラ軍団)」と呼ばれたのはそのためだ。

 だが20世紀半ばに起こったアイスランドとの水利権争い(「タラ戦争」)で英国が敗れるとともにこの町の漁業は急速に衰退し、フリートウッドは寂れた田舎町となる。この地域の最大の都市であるブラックプール市とつながる路面電車はあるものの、鉄道駅はなく、一時は期待された保養地としても伸びなかったことで、英国でも忘れられた存在になっていったのである。人口も減り、一時は「リーグ1」まで行ったフリートウッド・タウンFCも勢いが落ち、フリートウッドは静かな田舎町となっていた。

  1. 1
  2. 2
  3. 3