日本サッカーの伝統的な武器である「走ること」。しかし、現代の欧州トップレベルでは、ただ闇雲にピッチを駆け回るだけでは到底通用しない。ブンデスリーガ開幕戦で圧巻のハットトリックを達成した鈴木唯人のプレーには、世界で勝つための“日本人らしい走りの真髄”が詰まっていた。2030年W杯へ向けて新たなスタートを切る日本代表の未来を、サッカージャーナリスト・後藤健生が欧州で躍動する旬な才能たちの姿から読み解く。
■「ここにも日本人!」 昔から世界を驚かせてきた“伝統の武器”
はるか遠い昔から、「走ること」は日本人選手の、あるいは日本チームの武器だった。
1936年のベルリン・オリンピックで強豪スウェーデン(1938年ワールドカップで4位)相手に日本代表は3-2で逆転勝利を収めたが、当時のスウェーデンのラジオ実況アナウンサーが「ここにも日本人、ここにも日本人」というフレーズで日本の選手たちの運動量を伝えたエピソードは有名である。
あるいは、メキシコ・オリンピックで銅メダルを獲得した後、後進の育成に失敗して長い低迷期にあった1970年代の日本代表。東南アジア相手の試合でも「テクニックは相手のほうが上」という前提の下、走ることに活路を見出だそうとしていた。
世界的な強豪の一角となった今でも、やはり日本のサッカーの武器は走ることだ。
しかし、かつてのような闇雲な走りでは世界に通用するわけはない。
「走ること」というと、すぐに「運動量」という言葉に置き換えられるが、問題は運動“量”ではない。90分間に何キロ走ったかは、サッカーというスポーツでそれほど重要なことではないからだ。どのタイミングで、どのように走ったのか、それこそが大切なのだ。
ダラダラと長距離を走っていても意味がない。相手の守備ラインの裏に抜け出す時の絶妙なタイミングでの動き出しと動きの鋭さ。それが、求められるのだ。
上田綺世がリール移籍後に見せているような動き出しの鋭さ。そして、キビキビした動き。それこそが、日本人選手の特徴であるし、また大きな武器になっていくはずだ。































