■なぜスペインは挑発に乗ってこなかったのか
アルゼンチンの激しいプレーでスペインの選手が少しでもひるんでくれたら、そこから組織に綻びが生じる可能性があるし、逆にアルゼンチンの激しいプレーに対してスペインの選手が興奮して報復するような場面があればアルゼンチンにとっては理想的だったろう。
アルゼンチンももちろん組織力のあるチームだ。
なにしろ、リオネル・スカローニ監督が8年間の年月をかけてつくり上げてきたチームであり、前回大会で優勝を経験したメンバーも多い。ワンタッチ、ツータッチのパスを正確につないで相手陣内にギャップをつくり、そこを突いてくる。それが、今のアルゼンチンの理想の形だ。
だが、アルゼンチン選手には同時に「即興性」という大きな武器もある。
アルゼンチンでは育成段階から激しいボールの奪い合いを繰り返させる。練習試合では多少の反則があっても試合を止めることなく、延々とボールの奪い合いが続けられる。そのおかげで、組織が崩れた中でも個人戦術やグループ戦術を駆使して打開することに長けているのだ。
だから、スペイン相手に組織対組織の勝負を挑むのではなく、互いに構造を欠いた(アンストラクチュラルな)試合展開に持ち込めば、即興(インプロビセーション)の力でアルゼンチンが上回れる可能性がある。
しかし、スペインはアルゼンチンの威嚇や挑発にまったく乗ってこなかった。
スペインには、アルゼンチンの激しい当たりをかいくぐって正確にパスをつなぐだけのテクニックがあった。
つづく























