■苦境を覆したペレ獲得

 それを根本から覆したのが、1975年、ニューヨーク・コスモスがペレと契約したことだった。

 ペレはペレである。1940年生まれ、1958年ワールドカップに17歳でデビューし、ブラジルを初優勝に導く活躍を見せて一躍「サッカーの王様」と称されるようになる。欧州のビッグクラブから「白紙小切手」を示されたという猛烈なラブコールを受けながら少年時代から在籍したサントスFC一筋でプレーし、1974年に惜しまれて引退していた。ブラジルをワールドカップで3回の優勝に導き、「20世紀最高のスポーツマン」に選出されるなど、誰もが認める「サッカーの世界最高選手」だった。その名は、サッカーに関心があるわけでもないアメリカ人たちにも知られていた。

 そのペレを、NASLのニューヨーク・コスモスがピッチに引き戻したのである。

 ニューヨーク・コスモスは1970年創設。NASLの創設メンバーのひとつであった「ニューヨーク・ジェネラルズ」は、NASLを1シーズン戦った後に解散していた。いわば「空き家」になっていたニューヨークという一大マーケット(フランチャイズ)を、コスモスは引き継いだのである。

 創設者たちは、アメリカの音楽産業の大物たちだった。「アトランティック・レコード」の有名なエルテガン兄弟と、その親会社である「ワーナー・コミュニケーションズ」のスティーブ・ロス。やがてロスは元英国のジャーナリストであったクライブ・トイを動かしてあっという間に「ニューヨーク・コスモス」をつくり、1971年からNASLに参加させた。

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