【トッテナム激震】名将デゼルビの劇薬と高井幸大の未来(3)奇跡の残留か、ロメロら大量流出か。来季“デゼルビ流”全開へのシナリオの画像
ブライトン時代のデゼルビサッカーについて「ビルドアップに特徴がある」と語っていた三笘薫。だが、現在は…。撮影/原悦生(Sony α1使用)

 現在はプレミアリーグ残留に向けた「応急処置」に徹しているトッテナムのロベルト・デゼルビ監督。だが、彼が本来の戦術を現すのは来季以降だ。奇跡の残留を果たすか、それとも1977年以来の2部降格か――。その結末によって、クラブの未来と主力選手たちの運命は大きく変わることになる。(文:田嶋コウスケ/英ロンドン駐在記者)

■今は「戦術」より「迷わずプレーできる最短ルート」

 ロベルト・デゼルビがトッテナムの監督に就任して以降、まず見えてきたのは、このイタリア人指揮官がいま着手している仕事は、イメージされるような“デゼルビ流”の徹底とは少し違う、ということだ。

 彼の名前を聞いて多くの人が思い浮かべるのは、ブライトン時代に見せた独特のビルドアップだろう。最終ラインからボールを動かし、相手のプレスをあえて引き込みながら、その背後にできたスペースを鋭く突く。

 立ち位置は細かく設計され、ボールの持ち方にもルートにも明確な意図がある。三笘薫もブライトン時代のデゼルビサッカーについて「ビルドアップに特徴がある」と語っていたが、まさにそれが彼の最大の看板だった。

 だが、現在のトッテナムでその設計図は、まだほとんど展開されていない。デゼルビ本人も就任直後から、「原則やビルドアップに時間をかける余裕はない」「いま重要なのは正しいスピリットだ」と繰り返している。さらに「選手に混乱を与えたくない」「考えすぎずにプレーさせたい」とも話しており、現段階では戦術の注入よりも、選手の心理面を優先していることがよく分かる。

 実際、ここまでの試合内容を見ても、その意図は明白だ。サンダーランド戦でもブライトン戦でも、最終ラインでじっくりと相手を誘い込む、いわゆる“デゼルビらしい”ビルドアップは限定的だった。むしろ目立っていたのは、守備時の約束事をシンプルに整理し、高い位置でボールを奪ったら素早く前に届けるプレーである。

 複雑な可変システムというより、いまの選手たちが迷わずプレーできる最短ルートを選んでいる印象だ。残り試合が少なく、残留が至上命題である以上、この方針は今季終了まで続くはずだ。デゼルビも「私はスタイルを一気に変えに来たのではない。まずは試合に勝たなければならない」と繰り返している。

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