■「もどかしい」フランスの少年たちの行動
1998年のワールドカップで、興味深い光景を見た。「ボールボーイ」は真っ白なシャツ、真っ白な短パン、そして真っ白な帽子姿の少年たちだったのだが、ボールが出るとその近くの「ボールボーイ」は自分が持つボールを両手で頭の上に上げ、スローインやコーナーキックをする選手が自分を見るのを待つ。そして選手と目が合うと投げ渡すのである。
「マルチボールシステム」になって3シーズン目のJリーグでは、ボールが出ると近くの「ボールボーイ」はすぐにボールを投げていた。そしてスローインなどをする選手がそれに気づいて受け取り、プレーを再開するというリズムだった。それに慣れていたので、フランスの少年たちの行動はもどかしく感じた。
しかし、しばらく見ていて、それが「フランス社会」なのだと思った。人と人がかかわるとき、「コミュニケーション」が不可欠なのがフランス社会だった。言葉をかけ合わないまでも、顔を合わせ、視線をかわして、「渡すよ」「もらうよ」と双方の合意がなければものが動かない。しかし「日本社会」では、次の展開が決まっていれば、ボールの受け渡しは「あうんの呼吸」で行われる。コミュニケーションなど不要なのだ。
その後、男性だけでなく、女性の「ボールボーイ」も出てきたことから、「ボールパーソン」という言葉が定着し、現在行われているJリーグの特別シーズン「明治安田百年構想リーグ試合実施要項」にも、その第38条に「試合実施を円滑に進行するため、次の各号の補助係員をおき、必要な業務を行わせる」と規定され、警備員、場内放送要員に次いで第3項に「ボールパーソン」と明記されている。それが、ワールドカップでは、「コーン」にとって代わられようとしているのである。
つづく























