サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、目前に迫るワールドカップで採用される「新システム」についてだ。
よりスピーディな試合展開が求められる現代サッカーの裏側で、長年親しまれてきた“ボールボーイ”の姿がピッチから消えようとしているのをご存じだろうか。ひとつのボールをめぐる時間稼ぎの歴史から、各国の文化の違い、そしてピッチ外で起こる“場外乱闘”まで――。知ればワールドカップが100倍面白くなる、究極にマニアックなルールの裏側へご案内しよう。
■FIFAにとって「由々しき問題」
ムーアがハーストにロングパスを出してから28年後、全世界での延べテレビ視聴者数が321億人(世界中の人々が、1人当たり5.7試合を見た)となった1994年アメリカ大会でも、スタンドにボールを蹴り込んだら、戻ってくるまで待たなければならなかった。ブラジルGKタファレルは、3-2とリードしたオランダとの準々決勝の終盤、コーナーまで転がってしまったボールをゆっくりと走って取りに行き、40秒もかけてゴールキックをしていた。
サッカーファンにとってはおなじみの光景だったかもしれない。スタンドに蹴り込む時間かせぎやゴールキック時の緩慢な動作も、「サッカーの一部」のように思われていた時代だった。しかしワールドカップを主催する国際サッカー連盟(FIFA)にとっては由々しき問題だった。今やとんでもない数の人がテレビで注目するワールドカップ。よりスピーディで、エキサイティングな試合にしなければ、飽きられ、「商品価値」を失ってしまう…。
その4年前の1990年イタリア大会では、1試合平均2.21ゴールと得点数が史上最少となった。「試合がつまらない」と批判を受けたFIFAは、その後、味方からパスを受けたGKは手が使えないという「バックパスルール」を導入するなど、攻撃的なサッカーの推進に努めてきた。その結果、1994年大会では1試合平均2.71ゴールまで回復した。しかしそれでも、90分間のうちの実質的なプレー時間は50分ほどであり、危機感を持ち続けていた。























