サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、目前に迫るワールドカップで採用される「新システム」についてだ。
よりスピーディな試合展開が求められる現代サッカーの裏側で、長年親しまれてきた“ボールボーイ”の姿がピッチから消えようとしているのをご存じだろうか。ひとつのボールをめぐる時間稼ぎの歴史から、各国の文化の違い、そしてピッチ外で起こる“場外乱闘”まで――。知ればワールドカップが100倍面白くなる、究極にマニアックなルールの裏側へご案内しよう。
■アメリカ大会まで「1個のボール」でプレー
「マルチボールシステム」が変わる。
1試合に数多くのボールを用意してゴール裏やタッチライン沿いに配置した「ボールパーソン」に持たせ、試合で使用しているボールがゴールラインやタッチラインから出たときに新しいボールで素早く試合を再開させるシステム。それが、ワールドカップでは少し違う方法になる。
ピッチの周囲にトレーニングなどで使用する「マーカーコーン」を置き、その上にボールを乗せておく。ボールが出たら、プレーヤー自身がそのコーンからボールを取り、リスタートを行うのである。日本代表がグラスゴーでスコットランドと戦った試合を見たファンなら、その形に気づいたかもしれない。慣れているスコットランドの選手たちは、コーンから素早く拾ってスローインをしていた。ただ、ロンドンでのイングランド戦では、現在のJリーグと同じ、ボールパーソンが選手に投げ渡す形をとっていた。
「マルチボールシステム」はサッカーの歴史から見れば「ごく最近」に生まれた手法である。ワールドカップでいえば、1994年のアメリカ大会までは、試合は基本的に1個のボールで行われていた。ボールが壊れたときのために予備のボールが用意されていたが、空気が抜けるなどのことがない限り、90分間を通じて1個のボールでプレーされていた。それがそれまで130年間のサッカーの「伝統」だった。





















