3月末、森保一監督率いる日本代表が、サッカーの母国が誇る2つの「聖地」に足を踏み入れる。欧州勢とのアウェー戦が極めて困難な現代において、スコットランド(ハムデン・パーク)とイングランド(ウェンブリー・スタジアム)との連戦は、日本サッカー史に残る破格のビッグマッチだ。 実はこの2大スタジアムは、過去の日本代表にも数々のドラマをもたらした因縁の地でもある。ロンドン五輪におけるハムデンでの歓喜。カズとゴンが躍動も、まさかの結末を迎えた旧ウェンブリーでの死闘。そして、男女ともに躍進した新ウェンブリーの熱狂――。 サッカージャーナリスト・大住良之が、歴史的な連戦を目前に控え、スタジアムの知られざるディテールと、日本代表が刻んできた「聖地での記憶」を全5回にわたってマニアックにひも解く。
■2つのナショナル・スタジアム
夢のような国際試合シリーズだ。
3月末、日本代表は、ともにアウェーで、スコットランド、イングランドと連戦する。3月28日土曜日(日本時間29日午前2時)にグラスゴーのハムデン・パークでスコットランドと対戦し、31日火曜日(日本時間4月1日午前3時45分)にロンドンのウェンブリー・スタジアムでイングランドと相まみえる。
「ハムデン」と「ウェンブリー」である。1世紀半を超すサッカーの歴史。ともに、その「母国」が誇る「ナショナル・スタジアム」であり、スタジアム自体も100年の歴史を持って、さまざまなドラマを紡いできた。その舞台に、森保一監督率いる日本代表が立ち、世界最古の歴史を持つナショナルチームであるスコットランドとイングランドに挑むのである。
そもそも近年、欧州のナショナルチームとの親善試合は非常に困難になっている。欧州サッカー連盟(UEFA)が「極力親善試合をなくす」という方針をとり、2018年に「UEFAネーションズリーグ」をスタートさせたからだ。それまでは、欧州選手権とワールドカップの予選の合間に親善試合の日程があったが、それがほとんどなくなってしまったのである。
さらに言えば、ブラジルやアルゼンチンならともかく、日本との親善試合を組んでもファンを呼ぶことができない。現時点で最後に日本代表が欧州の代表チームとアウェー(相手国内)で対戦したのは2023年9月のドイツ戦だったが、使用されたのは2万6000人収容のフォルクスワーゲン・スタジアム(ヴォルフスブルク)だった。その国の「ナショナル・スタジアム」での欧州勢とのアウェーゲームは、2013年11月のベルギー戦(ブリュッセルのボードワン国王競技場)までさかのぼらなければならない。
今回、「ハムデン」と「ウェンブリー」で日本代表がスコットランド、イングランドと対戦するのは、まったく破格のことと言ってよく、日本のサッカー史において歴史的な連戦と言っても過言ではない。






















