■現実逃避の行動
動物の行動学者である英国のデズモンド・モリスが書いた『サッカー人間学(The Soccer Tribe)』(1981年、邦訳1983年小学館)によると、両手で頭を抱えたり、顔を覆う動作には、「遮断」とともに、「自分を慰める作用」があるという。目の前で起こってしまった現実をなかったものとし、逃げ、手で自らの頭や顔に触れることで安心感をもたらすのだという。
モリスはまた、世界的なベストセラーとなった『マンウォッチング(MANWATCHING)』(1977年、邦訳1980年小学館)で、「なぐさめが必要なとき、人は自分にふれる」と、「自己接触行動」を説明している。
サッカー選手がシュートを外して大きく天を仰ぎ、頭を抱え、顔を覆うのは、「失敗した」ことから目をそらし、自己へのダメージを抑制しようという行為に違いない。現実からの逃避が「ストライカーのメンタリティー」と言えるだろうか。
そして、それが「失敗したスポーツ選手」一般に見られる行動ではなく、サッカー特有のものだとしたら、サッカーのコーチたちはどう考えるだろうか。
「ボールは丸い、試合は90分間」と言ったのは、1954年に西ドイツをワールドカップ初優勝に導いた名将ゼップ・ヘルベルガーである。「主審が終了の笛を吹くまで、何が起こるか分からない」という戒めだ。現代のストライカーたちだけが、試合中に一瞬でも「現実」から逃避し、安心感を得ようしているのは、不思議でならない。













