■インクルーシブどころか「エクスクルーシブ」

 今回の「北米大会」は、そうした流れが極まった観がある。大会を主催するFIFA自体がファンを搾取する「悪徳転売業者」となってしまったことで、世界の大衆ファンを擁護する者はいなくなった。

「2026年ワールドカップは、史上最大、最高、そして最も『インクルーシブ』なワールドカップになる」―。FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は、繰り返しこう話している。

「インクルーシブ」とは、「さまざまな背景を持つ人々を排除せず、孤立させず、多様な人々を分け隔てなく受け容れ、尊重し、ともに支え合う」というような意味だろうか。国連が発表した「持続可能な開発目標(SDGs)」の重要なベースとなる考え方である。

 こんな言葉が、FIFA会長のどの口から出てくるのか―。「インクルーシブ」どころか、ワールドカップから大衆を締め出し、テレビとスポンサーと世界の一握りの富裕層だけのものとする「エクスクルーシブ(排除する)」なワールドカップではないか。

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