
埼玉スタジアムで開催されるJリーグ最終節の「ホーム自由席」と「ビジター自由席」の料金差が話題となっている。だが、来年のワールドカップでは、そんな格差がかわいらしく思えるほどの「チケット価格」と「転売システム」になっているという。どういうことか? サッカーを牛耳る人々の、とどまることを知らない欲望が生んだ「大衆からフットボールを奪う」行為に、サッカージャーナリストの大住良之が警鐘を鳴らす!
■売り手と買い手から「15%」の手数料
さらにひどいのは、新しい「チケット転売プラットフォーム」である。FIFAは入場券が不要になったときのために、2018年のロシア大会以来、自らオンラインの「転売プラットフォーム」を運営してきた。購入価格にほんのわずかの手数料をつけることは認めたが、基本的に入場券の「定価」で売買するシステムである。試合の直前まで取引ができることで、多くのファンにメリットをもたらしていた。当然、その一方で、「ネットオークション」などによる転売は厳しく禁じてきた。
しかし今回、FIFAが立ち上げたのは、転売価格の「上限なし」の転売プラットフォームである。すでに決勝戦の額面2030ドルのチケットが、発売の翌日にFIFAのプラットフォームで2万5000ドル(約375万円)で売りに出された。取引が成立すると、FIFAは売り手と買い手の双方から15%の手数料を取る。2030ドルのチケット販売価格にプラスして、2万5000ドルでの転売が成立すれば、7500ドル(112万5000円!)ものボロ儲けとなるというのである。これを古い日本語で「あこぎ」と言う。
ただ、メキシコ政府はこうした手法に激しく抵抗し、メキシコ国内で転売される場合には、入場券の額面以上の価格をつけることができないことになった。アメリカやカナダでは、さまざまなスポーツやコンサートなどでFIFAの転売プラットフォームのようなやり方が一般的なので、FIFAは、その「ジョーシキ」に乗ったのである。